デスモプレシンは、脳下垂体後葉ホルモンであるアルギニン・バソプレシン(AVP)の誘導体で、AVP1位のアミノ酸を脱アミノ化し、8位のL-アルギニンをD-アルギニンに置換した合成ペプチドである。デスモプレシンはAVPと同様に腎集合管細胞に分布するV2受容体を活性化して水再吸収を促進し(抗利尿作用)、夜間尿量を減少させると考えられる。
デスモプレシンの抗利尿作用1-11)
機序
- ①デスモプレシンはV2受容体に結合し、V2受容体を活性化させる。
- ②V2受容体の活性化によりGタンパク(Gas)によりアデニル酸シクラーゼ(AC)が活性化し、サイクリックAMP(cAMP)の産生が促進されると、プロテインキナーゼA(PKA)を介してアクアポリン(AQP)2を含む制御タンパク質がリン酸化する。
- ③その結果、水分子はAQP2を介して集合管より細胞内に再吸収される。
- ④その後水はAQP3やAQP4を介して血管側に移動する。
参考
アクアポリン
細胞膜に存在し、水チャンネルとして知られる4量体の膜タンパク質。水が通過できる程度の狭い間隙を有し、水分子のみを選択的に通過させることができる。
薬効薬理
バソプレシンV2受容体に対する作用(in vitro)1-3)
デスモプレシンのラットにおけるV1、V2受容体及びオキシトシン受容体に対する結合親和性(Ki値)は、それぞれ1,748、1.04、481nmol/Lであり、V2受容体に選択的な結合親和性を示した(Ki値:1.04nmol/L)1)。また、ムスカリン受容体(M1、M2、M3)への結合親和性はほとんど認められなかった(Ki値:>1×105nmol/L)2)。
また、ヒトV2受容体に対する50%有効濃度(EC50)はラットV2受容体に対するEC50と比較して17.6倍であった3)。
各種受容体に対する結合親和性1,2)
ヒト及びラットのV2受容体に対する作用活性の比較3)
抗利尿作用(ラット)4)
Sprague-Dawley系雄ラットに蒸留水25mL/kgを経口投与した後、デスモプレシンを皮下投与し、投与後5時間までの尿量を測定したところ、対照群(生理食塩液1.0mL/kg皮下投与)と比較して投与量の増加に応じて尿量は減少した。
抗利尿作用(ラット)4)
水及び尿素透過性亢進作用(in vitro)5)
単離したゴールデンハムスター腎髄質内層部集合管において、管腔膜側から基底膜側への水及び尿素の透過性を、デスモプレシンはそれぞれ0.01nmol/L以上、0.1nmol/L以上の濃度で亢進した。
1)社内資料[KW-8008の受容体結合能測定試験]
2)社内資料[KW-8008のOxytocin受容体に対する親和性の検討]
3)社内資料[バソプレシンV2受容体に対する作用]
4)社内資料[尿排泄量に対する作用(ラット)]
5)社内資料[水及び尿素透過性亢進作用]
6)Bourque CW, et al. Front Neuroendocrinol 1994 : 15(3); 231-274. FP00870
7)Schrier RW, et al. Am J Physiol 1979 : 236(4); F321-332. FP00889
8)Snyder HM, et al. Am J Physiol 1992 : 263(1Pt1); C147-C153. FP00890
9)Agre P, et al. J Biol Chem 1998 : 273(24); 14659-14662. FP00868
10)Nielsen S, et al. Physiol Rev 2002 : 82(1); 205-244. FP00874
11)Marples D, et al. Am J Physiol 1999 ; 276(3Pt2): F331-F339.