吸収
単回投与(健康成人)1)
日本人健康成人男性にミニリンメルト®60、120、240μg(各6例)を水負荷条件下※で、単回経口投与したときのデスモプレシンの血漿中濃度推移は下図のとおりであった。ミニリンメルト®は水を用いずに舌下で溶解して投与した。食事は投与前日の19時までに摂取し、投与日は投与後4時間、10時間に摂取することとした。
※ミニリンメルト®投与前2時間より、体重の2%に相当するミネラル水の摂取を開始した。悪心・嘔吐を避けるため、20分かけて摂取することとした。投与前20分から投与直前間で測定した被験者の尿排泄速度が≧0.12mL/kg/分を示さなくてはならないこととし、<0.12mL/kg/分である場合、その被験者は除外した。投与後30分間は、水分摂取を禁止し、その後は20分ごとに測定される排尿量と同量のミネラル水の負荷を継続した。治験薬投与後3時間は、尿排泄速度が>0.12mL/kg/分を示してもよいこととした。治験薬投与後3時間以降は、効果終了時点(20分間の尿排泄速度が2回連続で>0.12mL/kg/分を示した時点)でミネラル水の負荷を終了した。ただし、2回連続で>0.12mL/kg/分を示さない場合も、ミネラル水の負荷は、最大12時間で終了することとした。
デスモプレシンの血漿中濃度推移1)
また、薬物動態パラメータは表のとおりであり、投与量60、120、240μgでは用量に応じたAUC及びCmaxの増加が認められた。なお、ミニリンメルト®25μg、50μgについては、血漿中濃度の定量下限(正確に定量できる最低濃度)の問題から検討していない。
パラメータ | 60μg | 120μg | 240μg |
---|---|---|---|
AUCt(pg・hr/mL) | 23.25±4.48 | 50.84±7.46 | 139.90±10.99 |
AUCint(pg・hr/mL) | 35.61±9.01 | 61.95±9.96 | 150.24±14.17 |
Cmax(pg/mL) | 16.57±2.52 | 33.26±1.46 | 56.80±8.80 |
Tmax(hr) | 0.71±0.10 | 0.88±0.14 | 0.79±0.19 |
t1/2(hr) | 1.63±0.56 | 2.13±0.66 | 2.00±0.15 |
6. 用法及び用量 成人男性には、通常、1日1回就寝前にデスモプレシンとして50μgを経口投与する。
8. 重要な基本的注意(抜粋)
8.2 低ナトリウム血症による水中毒症状の発現及び重篤化を避けるために患者及びその家族に以下の点について十分説明・指導すること。
- 食事を含め、投与の2~3時間前より起床時迄の水分の摂取は最小限とすること。過度に水分を摂取してしまった場合は本剤の投与を行わないこと。
食事の影響(健康成人)2)
日本人健康成人男性(16例)にミニリンメルト®120μgをクロスオーバー法にて空腹時及び食後に経口投与したとき、空腹時と比較し、食後投与では平均AUCtは27%に、平均Cmaxは26%に減少した(ミニリンメルト®は水を用いずに舌下で溶解して投与)。
6. 用法及び用量 成人男性には、通常、1日1回就寝前にデスモプレシンとして50μgを経口投与する。
8. 重要な基本的注意(抜粋)
8.2 低ナトリウム血症による水中毒症状の発現及び重篤化を避けるために患者及びその家族に以下の点について十分説明・指導すること。
- 食事を含め、投与の2~3時間前より起床時迄の水分の摂取は最小限とすること。過度に水分を摂取してしまった場合は本剤の投与を行わないこと。
腎機能障害患者(外国人データ、静脈内投与)3)
外国人成人男女(22例)を対象として、デスモプレシンの薬物動態に対する腎機能障害の影響を検討した。デスモプレシン1.78μgを腎機能の正常者(クレアチニンクリアランス:>80mL/分、5例)、軽度の腎機能障害患者(クレアチニンクリアランス:50~80mL/分、6例)、中等度の腎機能障害患者(クレアチニンクリアランス:30~49mL/分、5例)及び高度の腎機能障害患者(クレアチニンクリアランス:5~29mL/分、6例)に単回静脈内投与した結果、腎機能障害の重症度に応じて全身クリアランスが低下し、正常者に比べ軽度、中等度及び高度の腎機能障害患者ではそれぞれ0.7倍、0.4倍、0.3倍に低下した。また、正常者に比べ軽度、中等度及び高度の腎機能障害患者では、AUCはそれぞれ1.5倍、2.4倍、3.7倍に増加し、消失相半減期はそれぞれ1.4倍、2.4倍、3.2倍であった。
6. 用法及び用量 成人男性には、通常、1日1回就寝前にデスモプレシンとして50μgを経口投与する。
9. 特定の背景を有する患者に関する注意(抜粋)
9.2 腎機能障害患者
9.2.1 中等度以上の腎機能障害のある患者(クレアチニンクリアランスが50mL/分未満)
投与しないこと。血中半減期の延長、血中濃度の増加が認められ重篤な副作用が発現することがある。
9.2.2 軽度の腎機能障害のある患者(クレアチニンクリアランスが50 ~ 80mL/分)
血中半減期の延長、血中濃度の増加が認められ重篤な副作用が発現することがある。
高齢者(外国人データ、錠・静脈内投与)4)
高齢者の健康な男性を対象に、午前または夜間にデスモプレシン錠を200μg(国内未承認)経口投与またはデスモプレシン注射剤を2μg静脈内投与する4群4期クロスオーバー法により生物学的利用能を検討したところ、高齢者のデスモプレシン経口投与の生物学的利用能は夜間投与が0.083%(95%信頼区間:0.051~0.115)、午前投与が0.079%(95%信頼区間:0.029~0.130)であり、午前投与・午後投与の間に生物学的利用能に差は認められなかった。高齢者の生物学的利用能は、他の臨床試験(RG84063-102試験)5)で報告された非高齢者の⽣物学的利⽤能の0.16%と比較し低かった。
6. 用法及び用量 成人男性には、通常、1日1回就寝前にデスモプレシンとして50μgを経口投与する。
9. 特定の背景を有する患者に関する注意(抜粋)
9.8 高齢者
患者の状態を勘案してデスモプレシンとして25μgから投与を開始することも十分に検討すること。また、患者の状態を観察しながら慎重に投与すること。低ナトリウム血症が発現しやすい傾向がある。
分布
分布容積(外国人データ、静脈内投与)6)
外国人健康成人男性23例にデスモプレシン1.78μgを単回静脈内投与した結果、定常状態における分布容積は26.5Lであった。
組織移行性(ラット、点鼻投与)7)
ラットに125Iで標識したデスモプレシン0.2μgを点鼻投与し、30分後に放射能濃度を測定したところ、血液(血漿)を除き、甲状腺>膀胱>腎臓>肝臓の順での分布が認められた。甲状腺に高濃度な放射性分布が観察されたことから、脱離した125Iが移行しているものと考えられる。
蛋白結合率(in vitro)8)
限外ろ過法により、ヒト血清タンパクに対する2~100pg/mLの125Iで標識したデスモプレシンの結合率を検討したところ、結合率は74.0%~76.3%であった。
添加濃度(pg/mL) | 2 | 50 | 100 |
---|---|---|---|
血清蛋白結合率(%) | 76.3±3.3 | 74.2±2.8 | 74.0±3.4 |
代謝
代謝部位及び代謝経路(in vitro)9-11)
ヒト腎臓及び肝臓ミクロソームを用いてデスモプレシンの代謝を検討した試験では、デスモプレシンの代謝は認められなかった9)。一方、ラット腎臓及び肝臓の粗ホモジネートを用いて検討した試験では、肝臓の粗ホモジネートでインキュベートした場合にデスモプレシンの分解がみられたが、腎臓の粗ホモジネート中での分解は少なく10)、デスモプレシンのエンドペプチダーゼによる代謝はミクロソームではなく、肝細胞内で生じていることが示唆された。デスモプレシン酢酸塩水和物をウサギ腸管粘膜ホモジネートとインキュベートした場合には、代謝物として[ Mpa1,Des-D-Arg8-Gly9-NH2]-バソプレシンがHPLCで確認され、それ以外の分解物は検出されなかった11)。デスモプレシンはおそらくプロリルエンドペプチダーゼによりそのC-末端で代謝を受けて、加水分解されると推測される。
薬物代謝酵素に対する阻害作用(in vitro)12)
チトクロームP450(CYP)に対するデスモプレシンの阻害作用についてヒト肝ミクロソームを用いて検討した結果、デスモプレシンは10μMの濃度で、試験に用いたCYP分子種(CYP1A2、2A6、2B6、2C8、2C9、2C19、2D6、2E1及び3A4)に対し阻害作用を示さなかった。
排泄
クリアランス(外国人データ、静脈内投与)8)
外国人健康成人男性23例にデスモプレシン1.78μgを単回静脈内投与した結果、全身クリアランスは7.6L/hrであった。
排泄部位及び経路(外国人データ、静脈内投与)3)
外国人健康成人男女6例にデスモプレシン1.78μgを単回静脈内投与した結果、52%(44%~60%)が未変化体として尿中に排泄された。
6. 用法及び用量
成人男性には、通常、1日1回就寝前にデスモプレシンとして50μgを経口投与する。
1)社内資料[健康成人における薬物動態及び薬力学的検討:CS32試験][承認時評価資料]
2)社内資料[薬物動態に及ぼす食事の影響:032試験][承認時評価資料]
3)社内資料[腎機能障害における薬物動態への影響:CS001試験]
4)社内資料[海外薬物動態試験:45A07-39試験]
5)社内資料[A formulation uniformity study:RG-84063-102試験]
6)社内資料[絶対的生物学的利用率:CS004試験]
7)西垣淳子,他.基礎と臨床 1995; 29(10): 2517-2539.
8)社内資料[125I-KW-8008 のin vitro 蛋白結合]
9)Fjellestad Paulsen, A. et al. Regulatory Peptides 1996; 67: 27-32.
10)Shimuzu K et al. Mechanism of the prolonged antidiuretic action of DDAVP and its metabolic features. In: Yoshida S, et al(eds). Antidiuretic hormone, Baltimore, MD, University Park Press 1980; 271-284.
11)Lundin S, et al. Pharmacol Toxicol 1989; 65(2): 92-95.
12)社内資料[ヒト肝薬物代謝酵素系に対する代謝試験]