安全性:水中毒(低ナトリウム血症)
水中毒(低ナトリウム血症)はミニリンメルトの最も留意すべき副作用です。水中毒(過剰な水分が体内に貯留)は、水分の取りすぎ等で血液が薄まり血液中のナトリウムの濃度が低くなること(低ナトリウム血症)で発現します。そのため、ミニリンメルトの効果が持続している間は、過剰に水分が体内に貯留しないよう、水分の取りすぎに十分に注意します。
症状
水中毒とは浸透圧異常の一状態であり、特に低浸透圧状態あるいは低ナトリウム血症が短時間のうちに起こり、何らかの症状が出現した状態で、重篤な場合は脳浮腫、昏睡、痙攣等の症状が発現します。
一般的に血清ナトリウム濃度が120mEq/L以下、血漿浸透圧が250mOsm/kg以下に低下すると、全身倦怠感、食欲不振、頭痛、悪心、嘔吐、無気力、傾眠などの症状があらわれ、血清ナトリウム濃度が110mEq/L以下、血漿浸透圧が230mOsm/kg以下になると昏迷、昏睡、痙攣などが起こるといわれています1)。
予防方法
・過度の飲水を避け、点滴等による水分摂取にも注意する。
・指示されたミニリンメルト投与量を厳守する。
・患者及びその家族に水分摂取管理の重要性について十分説明・指導する。
・過度に飲水してしまった場合、ミニリンメルトの投与を行わない。
・水中毒を示唆する症状があらわれた場合は、直ちにミニリンメルトの投与を中断する2)。
治療方法
フロセミドを静注し、1-2時間ごとに尿中ナトリウム、カリウム排泄量を測定しながら、排泄量に見合う量のナトリウムとカリウムを高張食塩水と塩化カリウムの点滴静注により補ってください。必要に応じてこの操作を繰り返しながら、中枢神経系症状の消失を目安に血清ナトリウム濃度125mEq/L程度まで徐々に※血清電解質を補正します。その後、治療の主体を水分制限に切り換えます1)、3)。
※急速な血清ナトリウム濃度の補正は橋中心髄鞘崩壊を引き起こす危険性があります。予防としては低ナトリウム血症では電解質の補正を決して急激に行わず、1日5-10mEq/Lずつゆっくりと行ってください4)。
報告例(海外データ)
デスモプレシン治療による低ナトリウム血症発現例54例を分析したところ、半数が投与開始14日以内で発現、重症の低ナトリウム血症が生じた患者の57%にて前駆症状として頭痛、悪心・嘔吐が発現したとの海外報告5)があります。
重要な基本的注意
[夜尿症]
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本剤投与中に水中毒症状を来すことがあるので、次の点に注意すること。
- 過度の飲水を避け、点滴・輸液による水分摂取にも注意すること。
- 本剤による治療を1週間以上続ける場合には、血漿浸透圧及び血清ナトリウム値の検査を実施すること。
- 本剤投与中は定期的(1ヵ月毎)に患者の状態を観察し、水中毒を示唆する症状(倦怠感、頭痛、悪心・嘔吐等)の発現に十分注意すること。
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水中毒の発現を予防するために患者及びその家族に次の点について十分説明・指導すること。
- 投与の2~3時間前(夕食後)より翌朝迄の飲水は極力避けること。過度に飲水してしまった場合は本剤の投与を行わないこと。水分や電解質のバランスが崩れ、水分補給が必要となる急性疾患(全身性感染症、発熱、胃腸炎等)を合併している場合は本剤の投与を中止すること。
- 就眠前の排尿を徹底し、指示された投与量を厳守すること。
- 水中毒を示唆する症状(倦怠感、頭痛、悪心・嘔吐等)があらわれた場合には直ちに投与を中断し、速やかに医師に連絡すること。
- 他院や他科を受診する際には、本剤投与中である旨を担当医師に報告すること。
[中枢性尿崩症]
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口渇中枢異常を伴う症候性尿崩症の患者では水出納のバランスがくずれやすいので、本剤投与中は血清ナトリウム値に十分注意すること。
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本剤投与中に水中毒症状を来すことがあるので、次の点に注意すること。
- 過度の飲水を避け、点滴・輸液による水分摂取にも注意すること。
- 適正な飲水量及び適正な用法の習得並びに維持量を決定するまで、入院するなど必要な処置をとることが望ましい。
- 本剤投与中は患者の状態を観察し、水中毒を示唆する症状(倦怠感、頭痛、悪心・嘔吐等)の発現に十分注意すること。
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水中毒の発現を予防するために患者及びその家族に次の点について十分説明・指導すること。
- 指示された飲水量、用法・用量を厳守すること。
- 過度に飲水してしまった場合は本剤の投与を行わないこと。発熱、喘息等の飲水が増加する疾患を合併している場合は特に注意すること。
- 水中毒を示唆する症状(倦怠感、頭痛、悪心・嘔吐等)があらわれた場合には直ちに投与を中断し、速やかに医師に連絡すること。
- 他院や他科を受診する際には、本剤投与中である旨を担当医師に報告すること。
重大な副作用
脳浮腫、昏睡、痙攣等を伴う重篤な水中毒があらわれることがあるので、過量な水分の摂取には十分注意し、異常が認められた場合には投与を中止して、水分摂取を制限し、必要な場合は対症療法を行うなど、患者の状況に応じて処置すること。(頻度不明)
- 山路 徹, 最新内科学体系, 第12巻 間脳・下垂体疾患. 1993;182.[中山書店]
- 宮村正和, 他:日本小児科学会雑誌 2003;107(11):1570.
- William Harris Jr. H, NELSON Text Book of PEDIATRICS, 2000;16ed. 1684.
- 最新内科学体系, 第69巻 代謝性・中枢性神経疾患. 1996;208.[中山書店]
- Lucchini B, et al.,J Pediat Urol. 2013;9(6):1049.