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効果的な夜尿症診療

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夜尿症について

夜尿とは、夜間就寝中に不随意的に遺尿を生じ、衣類や寝具を湿潤させる状態をいいます。

おねしょ 幼児期に夜寝ている間におねしょをする場合(排尿にかかわるメカニズムが未熟)
夜尿症 5歳以降で、1か月に1回以上の夜尿が3か月以上続くもの

夜尿症の初期診療
~小学生になっても続くおねしょをどう診るか~

夜尿症の経験は子供に強い精神的外傷をもたらします

8~16歳の若者において、夜尿症が、両親の離別、争いに続き、3番目に強い精神的外傷をもたらす出来事としてみられました。
これらの経験は、いじめよりも悪い経験とみなされました。
夜尿症の経験は子供に強い精神的外傷をもたらすことが示唆されています。
夜尿による子どもへの精神的重圧の影響(海外データ)

夜尿症に悩む患者が多いにもかかわらず、未受診・未治療の患者が多い

厚生労働省の人口動態統計などの資料から推定すると、わが国における夜尿症患児の総数は約78万人に上るとされています。しかし、実際に医療機関を受診している患児は推計で約16万人であり、そのうち治療を受けているのは約4万人にすぎません。
夜尿症患者数と治癒患者数(推計)

夜尿が続いて受診した小学生に対しては「とりあえず様子をみる」時期は過ぎています

罹患率は、幼稚園の年長時で17~20%程度、小学校入学から小学3年生頃までで11~13%程度、高学年になる頃には約7%、中学校入学時には約5%といわれています 1)。経過観察で様子をみているだけでは、小学校入学時に夜尿がある子供の約半数は、小学校高学年でも夜尿をしている可能性があることが知られています。

1)服部益治:小児看護 38:336-341, 2015

夜尿症:5歳以上で週2回以上の夜間尿失禁が3か月以上継続

早期の治療介入が、夜尿卒業までの期間を短縮させます

夜尿症は生活指導、薬物療法、アラーム療法などの治療を行うことで、自然経過よりも約3倍治癒率を高めることができます 1)。小学校低学年で生活指導などから夜尿症初期診療を開始することで、宿泊行事の増える小学校高学年までに夜尿を卒業させることも可能となります。

1)日本夜尿症学会編:夜尿症診療ガイドライン2016.診断と治療社,p11, 2016

初期診療での問診のポイント

問診の後に、生活指導と日誌などにより寝具の濡れ具合や、夜尿回数、排便排尿の頻度を記録することで初期診療をスタートします。それほど高い頻度ではありませんが、6か月以上みられなかった夜尿が再開したり、昼間尿失禁や尿意切迫症状・頻尿や遺糞がよくある場合には、基礎疾患がある可能性が高いと考えられ小児泌尿器科など専門医への紹介も考慮します。
プライマリケア医の診療(問診)

生活指導のポイント

生活改善リスト

夜尿症治療の基本は、生活改善に取り組むことです。この取り組みは、お子様の約2~3割が生活改善の実施のみで夜尿しなくなる、と言われるほど重要です。

規則正しい生活をする
夜更かしや不規則な生活は夜尿を悪化させます。早寝、早起き、決まった時間の食事を心がけましょう。朝食と昼食は、しっかり食べましょう。夕食は控えめにして、できるだけ寝る3時間前までに済ませましょう。
水分の摂り方に気を付ける
寝る前に水分を摂り過ぎると、夜尿につながります。ただし、水分は体にとても大切ですので、朝食と昼食ではたっぷり摂ってください。昼食の後からは水分(ジュース、お茶、牛乳など)を控えめにし、夕食時から就寝まではコップ1杯程度までの水分摂取にとどめましょう。
塩分を控える
塩分の摂り過ぎは、のどの渇きから夜尿の原因となる水分の摂り過ぎにつながります。また塩分の摂り過ぎは、水分を摂り過ぎていない場合でも、夜尿の原因になります。
便秘に気を付ける
便秘とは、便の回数が少ない(週2回以下)か、出にくい(出血や痛みがある)ことをいいます。便が腸に大量にある状態は膀胱などを圧迫し、夜尿の原因となっている可能性があります。野菜・果物・豆類・芋類などに多く含まれる食物繊維を多く食べることを心がけましょう。
寝る前にトイレにいく
トイレに行ってから寝る習慣をつけましょう。
布団に入り30分~1時間経っても寝付けないときには、もう一度トイレに行きましょう。
寝ているときの寒さ(冷え)から守る
冷えは、尿が作られる量を増やし、膀胱が縮小することにつながります。特に冬は、下着を重ね、靴下を履き、ダウンベストを着る等により、体幹を冷えから守り、温かくして寝ましょう。
夜中、無理にトイレに起こさない
夜中に無理にトイレに起こすと、寝ている時間におしっこをする習慣がつき夜尿が治りにくくなることがあります。

夜尿症初期診療の全体像(治療の流れ)

夜尿症初期診療の全体像(治療の流れ)の図

初回受診

初めて受診される場合は、お子さまの状態を確認するために「尿検査」と「問診」が行われます。

尿検査
  • 臓器そのものの疾患である可能性の除外
  • 薬物治療に適応しているかどうかの確認
問診
  1. 生活改善をするために現在の生活習慣を確認
  2. 昼間にもおもらしをする、便をもらしてしまうなど臓器そのものに疾患がないかを確認

※専門的な治療が必要と判断されれば、専門医に紹介される場合があります。

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