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弊社製品領域の最新情報を論文等から紹介しています。特定の薬剤/システムの処方/使用誘因あるいは企業の営利を企図するものではなく、
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19年間に集積された女性の癌患者879例における妊孕性温存後の生産率、卵子と胚の利用率
Live birth rate and utilization rate of eggs and embryos following fertility preservation (FP) in 879 female cancer patients over 19 years

Khalife D, Ali S, Khalaf Y, Reddy N, Kopeika J
The 36th Virtual Annual Meeting of the European Society of Human Reproduction and Embryology Virtual Annual Meeting 5-8 July, 2020 2020年 

多くの国において癌患者の妊孕性温存が確立されており、利用者が増えている。しかし、妊孕性温存後の卵子や胚の長期利用率はほとんど報告されていない。本研究では、癌の診断時に妊孕性温存を決めた女性の割合、再受診率、癌治療後の卵子と胚の利用率、生産率を評価するため、2000年1月~2019年12月に英国の1施設において妊孕性温存のカウンセリングを希望した若齢の女性癌患者879例(平均33.8±7.8歳、AMH値18.8±20.5pmol/L、BMI 23.7±4.2kg/m2、乳癌63. 1%)を対象とする前方視的コホート研究を行った。カウンセリングを受けた373例(42.4%)のうち、胚凍結保存を決めた女性の割合は40.7%、卵子凍結保存を決めた女性の割合は53.4%、卵子と胚の凍結保存を決めた女性の割合は5.1%、別の施設での卵巣凍結保存を決めた女性の割合は0.76%であった。卵巣機能検査、更年期症状、ホルモン補充療法、不妊治療のための再受診率は33.8%(297/879例)であった。凍結保存した卵子や胚の利用率は16.4%(61/373例)、主要評価項目の生産率は72.1%(44/61例)であった。双胎児の割合は9.1%(4/44例)、流産率は12.2%(8/61例)であった。平均追跡期間21.2±19ヵ月において再受診した患者の66%が癌の診断から2年以内に再受診していた。乳癌患者では、44.3%(27/61例)が凍結保存した卵子や胚を利用し、その生産率は70.3%(19/27例)であった。リンパ腫患者の生産率は37.5%(3/8例)であった。以上の結果から、妊孕性温存のカウンセリングは有効である可能性が示された。

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子宮内膜受容能アレイおよび妊娠率に対する慢性子宮内膜症の影響
The impact of chronic endometritis on endometrial receptivity array and pregnancy rates

Kuroda K, Horikawa T, Moriyama A, Nakao K, Juen H, Takamizawa S, Ojiro Y, Nakagawa K, Sugiyama R
The 36th Virtual Annual Meeting of the European Society of Human Reproduction and Embryology Virtual Annual Meeting 5-8 July, 2020 2020年 

子宮内膜受容能アレイ(ERA)は患者個人のインプランテーションウィンド(WOI)を客観的に特定する新しい方法である。慢性子宮内膜症(CE)は子宮内膜にCD138陽性形質細胞が認められる局所の慢性炎症であり、子宮内膜の剥落や最適なWOI に悪影響を及ぼすおそれがある。本研究では、ERA の結果に対するCE の影響を検討するため、2018年8月~2019年10月に日本の1施設において組織検査を受けた不妊女性66例のうち、3ヵ月以内にERA と免疫組織化学検査を受けた56例を対象とする後方視的横断研究を行った。CE がない女性26例(non-CE 群)、ERA の時点で未治療のCE 女性12例(CE 群)、ERA の実施前にCE の治療に成功した女性18例(cured-CE 群)に分類し、検査結果を比較した。無作為に選んだ間質の領域10ヵ所におけるCD138陽性形質細胞数(倍率400倍で5個以上の場合、CE と診断される)は、non-CE 群で0.5±0.9個、CE 群で29.9±31.3個、cured-CE群で0.9 ± 1.0 個であった(p < 0.001)。ERA にて受容能があると判定された子宮内膜の割合は、non-CE 群の57.7%(15/26例)、cured-CE 群の55.6%(10/18例)と比べ、CE 群で8.3%(1/12例)と有意に低かった(p <0.001)。ただし、CE 群ではプロゲステロンの投与開始から5日後の検査で58.4%に受容能(late or post-receptive)が認められ、CE の全例には胚移植前に抗菌薬が投与された。ERA を実施後1回目の胚移植による臨床妊娠率は、non-CE 群で66.7%(14/21例)、CE 群で16.7%(2/12例)、cured-CE群で50.0%(8/16例)であった(p =0.022)。以上の結果から、CE 女性の多くはERA の結果が非受容性であることが示された。一方、CE を治療することによって、適切なWOI を得られる可能性もあると考えられた。

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GnRHアンタゴニスト周期後の累積生産率の優位性は卵巣反応と関連する:日本人データの周期別解析
Superiority of cumulative live birth rates after GnRH antagonist cycles relates to ovarian response:a cycle-specifific analysis of data from a Japanese national registry

Jwa SC, Takamura M, Kuwahara A, Kajihara T, Ishihara O
The 36th Virtual Annual Meeting of the European Society of Human Reproduction and Embryology Virtual Annual Meeting 5-8 July, 2020 2020年 

採卵あたりの累積生産率を最大化するためには、卵巣反応が正常または高い女性に対してGnRHアンタゴニストプロトコールが用いられている。しかし、卵巣反応が低い女性に対する卵巣刺激法の選択についての報告は少ない。本研究では、様々な卵巣刺激法での累積生産率が卵巣反応の各グループで同等かを検討するため、日本のARTレジストリデータを用いた大規模後方視的解析を行った。2014~2015年に新鮮胚移植を施行した204,675サイクル、その後2016年12月までに凍結胚移植を施行した179,313サイクルを対象とした。解析した卵巣刺激法は、GnRH アゴニスト(66,962サイクル)、GnRHアンタゴニスト(56, 027サイクル)、低刺激法としてクロミフェンクエン酸塩(CC)(30,098サイクル)、CC +ゴナドトロピン(Gn)(41,991サイクル)、letrozole(4,363サイクル)、letrozole+Gn(5,234サイクル)であった。患者全体の累積生産率は27.6%であり、高い順にGnRH アンタゴニストで31.2%、GnRHアゴニストで30.1%、低刺激法で22.6~24.4%であった。採卵数が15個を超える卵巣反応が高い女性では、GnRHアンタゴニストと比べてGnRHアゴニストでの累積生産率が有意に低かった(調整オッズ比0.72、95%信頼区間0.68~0.77)。採卵数が10~15個の卵巣反応が正常な女性では、GnRHアンタゴニストと比べてCC+GnまたはGnRHアゴニストでの累積生産率に有意差はみられなかった。採卵数が10個未満の卵巣反応が低い女性では、GnRH アンタゴニストと比べてCC(1.43、1.32~1.54)、CC + Gn(1.07、1.02~1.12)、letrozole(1.35、1.14~1.61)、letrozole+Gn(1.43、1.27~1.61)での累積生産率が高かった。以上の結果から、卵巣反応が低い女性の卵巣刺激法としてCC やletrozoleを用いた低刺激法はGnRHアンタゴニストと同等以上の累積生産率を得られることが示唆された。

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卵胞期または黄体期の卵巣刺激後に得られたeuploid胚盤胞による生産率は同等である:ガラス化保存単一胚移植293サイクルの前方視的多施設共同研究
The euploid blastocysts produced after either follicularphase or luteal-phase-stimulation show similar live-birth rates: a prospective multicenter study including 293 vitrifified-warmed single-embryo-transfers

Vaiarelli A, Cimadomo D, Colamaria S, Trabucco E, Sansone A, Alviggi E, Della Ragione A, Golia F, Fiorini F, Barnocchi N,Papini L, Conforti A, Alviggi C, Rienzi L, Ubaldi FM
The 36th Virtual Annual Meeting of the European Society of Human Reproduction and Embryology Virtual Annual Meeting 5-8 July, 2020 2020年 

排卵前には複数の卵胞波がある。卵胞期の卵巣刺激(FPS)または黄体期の卵巣刺激(LPS)の施行後に得られた卵子の受精、胞胚形成、euploidy 率は同等であると報告されており、卵巣反応が低い女性に対する新たな卵巣刺激法が支持される。本研究では、FPS 後またはLPS 後に得られたeuploid 胚盤胞の生殖転帰を比較するため、2015年10月~2019年3月にイタリアで低卵巣反応(AMH 1.5ng/mL以下、胞状卵胞数6個以下、前周期の採卵数5個以下、高年齢)の女性を対象とする多施設共同研究を行った。アンタゴニストプロトコールの1サイクル中にFPSとLPS(採卵の5日後から開始)の両方を施行し、ガラス化保存したeuploid胚盤胞の最初の単一胚移植293サイクル(FPS群139例、LPS群154例)の転帰を解析した。FPS群とLPS群の年齢、精子因子、不妊原因、PGTの適応は同等であった。FPS群とLPS群の生化学的妊娠喪失率は10.8%(9/83例)、9.2%(9/98例)、流産率は10.8%(8/74例)、11.2%(10/89例)、生産率は47.5%(66/139 例)、51.3%(79/154 例)(p = 0.6)であった。なお、FPS後とLPS後の両方でeuploid胚盤胞が得られた女性100例(34%)では、各移植後の生産率が51.9%(28/54例)、4.3%(25/46例)と同等であった。FPS群の6.0%(4/66例)には妊娠糖尿病1例、黄疸1例、羊水過多症1例、一卵性双胎妊娠1例がみられた。LPS 群の6.3%(5/79例)には妊娠糖尿病がみられた。両群の在胎期間、出生体重、身長は同等であった。FPS群の新生児の6.0%(4/67例)には、新生児呼吸窮迫症候群1例、横隔膜ヘルニア1例、単腎1例、水頭症1例がみられた。LPS群の新生児の問題は報告されなかった。以上の結果から、FPS とLPS の生産率は同等であり、必要に応じてLPSを取り入れる可能性が考えられた。

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COVID-19パンデミックの期間中に不妊治療クリニックの閉鎖を経験した患者:評価、対処、感情
Patient experiences of fertility clinic closure during the COVID-19 pandemic: appraisals, coping and emotions

Boivin J, Harrison C, Mathur R, Burns G, Pericleous-Smith A, Gameiro S
The 36th Virtual Annual Meeting of the European Society of Human Reproduction and Embryology Virtual Annual Meeting 5-8 July, 2020 2020年 

COVID-19に対する不妊患者の反応として治療のキャンセルによる中程度~過度の動揺が報告されている。本研究では、パンデミックの期間中に不妊治療クリニックの閉鎖を経験した18歳以上の患者946例を対象とし、2020年4月9~21日にソーシャルメディアを用いた横断研究を行い、その影響を検討した。COVID-19に対する知識、恐怖心、クリニックの閉鎖で良かったことと悪かったこと、閉鎖と再開の情報のあり方について英語でのオンライン調査を行ったところ、完全回答率は48%(男性4例、女性446例、平均33.6±4.4歳)であった。367例(82.2%)が検査や治療を延期していた。クリニックの閉鎖に対する患者の評価は、ポジティブなものよりもネガティブなものが多く(p<0.001)、非常にまたは極端にコントロール不能で(p<0.001)、ストレスの多いもの(p<0.001)と受け止められていた。クリニックの閉鎖に対処する能力については平均を下回る患者が多く(p<0.001)、患者の11.9%は全く対処できていなかった。回答結果を4つにまとめると以下のとおりであった。第一に、COVID-19の影響は未知であり、クリニックの閉鎖は予防的なもの、または妊娠の機会において不公平なものである。第二に、治療の延期や不妊の影響が不透明であり、クリニックの閉鎖は親になる目標の達成を脅かすものである。第三に、脅迫観念や不透明感が個人の対処能力に負担となっているが、様々な方法(思考マネジメント、次の治療のための心身の準備、ソーシャルネットワークの活用、クリニックに関する新しい情報の把握)によって乗り越えられる。最後に、多くの患者はこの状況に対してストレス、不安、フラストレーションを抱えており、少数ではあるが絶望感を報告する患者もいた。また、治療の延期の影響や、再開後の順番待ちリストの優先順位について、より多くの情報が望まれていた。不妊治療クリニック、患者、規制当局、専門家が協力し、先を見越してCOVID-19の影響に取り組む必要がある。

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ゴナドトロピンと併用して多血小板血漿(PRP)を卵巣内に投与した早発卵巣不全の女性における生産:症例報告
Live birth in woman with premature ovarian insufficiency receiving ovarian administration of platelet-rich plasma (PRP) in combination with gonadotropin: a case report

Hsu CC, Hsu L, Hsu I, Chiu YJ, Dorjee S
Front Endocrinol (Lausanne) 2020年 

早発卵巣不全(POI)の女性は妊娠率が低く、そのほとんどが提供卵子を用いている。近年、様々な増殖因子を含む多血小板血漿(PRP)が卵胞の発育をサポートすると報告されているが、PRP のみでは初期の発育に対する効果が十分でない可能性が考えられる。今回、ゴナドトロピンと併用してPRP を卵巣内に投与し、生産に至った37歳のPOI 症例を報告する。本症例は33歳時の血清AMH 値が0.23ng/mLと低く、6ヵ月間の続発性無月経を経験した。32歳時と33歳時に卵巣刺激を2サイクル行ったが、卵胞の発育は認められなかった。PRP とゴナドトロピンを投与する5ヵ月前の血清AMH 値は0.02ng/mL 未満、FSH 値は43.50mIU/mLであり、投与直前の血清FSH 値も63.65mIU/mL、LH 値は44.91mIU/mL と高かった。FSH 150IU、rLH 75IU を含むゴナドトロピン製剤1mLと、末梢血40mL から調製したPRP 5mL の混合溶液を経腟超音波ガイド下で両側卵巣の間質に3mL ずつ注入したところ、4日目には4mmの卵胞が認められ、8日目には10mm となり、自発排卵が確認された。また、その後の2サイクルにおいて周期2日目の血清FSH 値とLH 値が大きく低下したことから、周期2 日目と5 日目にFSH300IU、hMG 375IU を腟壁へ注入投与し、11日目に採卵した。初回周期の卵子3個は凍結融解後に、2回目の周期の卵子3個は採卵後にICSIを行った。Day3胚3個(8細胞期2個、5細胞期1個)を移植したところ、双胎妊娠が確認され、妊娠30週目に男児(1,300g)と女児(1,258g)を出産した。現時点で二児ともに身体的および精神的に正常な発育をしている。以上の結果から、PRPとゴナドトロピンの卵巣内投与によりPOI女性の卵巣機能が回復し、自己卵子を用いたIVF が可能になることが示唆された。FSH は卵巣内の因子との相乗作用により前胞状卵胞の発育を促進することが報告されており、卵巣内への直接投与が有望な治療法の一つになると考えられる。

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トリメチルアミン-N-オキシドはヒト卵胞液中に存在し、胚の質の負の予測因子となる
Trimethylamine-N-oxide is present in human follicular fluid and is a negative predictor of embryo quality

Nagy RA, Homminga I, Jia C, Liu F, Anderson JLC, Hoek A, Tietge UJF
Hum Reprod 2020年 35巻 1号 81〜88

トリメチルアミン‐N‐オキシド(TMAO)は、食事由来のコリンとL‐ カルニチンが腸内細菌および肝酵素によって代謝された産物であり、動脈硬化、糖尿病、過体重のバイオマーカーとされている。また、肥満女性の卵子の質は低く、生活習慣に伴う卵胞液中の組成の変化が関連している可能性がある。本研究では、卵胞液中のTMAO 濃度と胚の質との関連を検討するため、2014年10月~2018年3月にオランダの1施設において低刺激変法でIVFを施行した女性132例(431サイクル)を対象とする前方視的観察コホート研究を行った。主席卵胞が14mm に到達した時点からGnRHアンタゴニスト0.25mg、rFSH 150IUの投与を開始し、トリガーとしてhCG 10,000IUを投与した。採卵日に卵胞液と血漿を採取し、TMAOおよびその前駆体(コリン、L‐ カルニチン、γ ‐ ブチロベタイン)の濃度を測定した。IVF/ICSI を施行後、Day2胚を移植し、黄体補充としてhCG 1,500IUを採卵後5、8、11日目に投与した。最終的に111例(31.4±3.50歳、232サイクル)を評価対象とした。初回周期の検体(63例)において、卵胞液中は血漿中と比べてコリン濃度が有意に高く、γ-ブチロベタイン濃度が有意に低く、TMAO 濃度が低い傾向を示し、L- カルニチン濃度に有意差はみられなかった。これらの卵胞液中濃度と血漿中濃度には正の相関が認められた。良好胚に発育した卵子は、胚の質が低かった卵子と比べ、卵胞液中のTMAO 濃度が有意に低く(調整オッズ比0.56、95%信頼区間0.42~0.76)、γ - ブチロベタイン濃度も低かった(0.79、0.62~1.00)。正常に受精した卵子においても同様の結果が得られたが、フラグメンテーション率が10%未満となった卵子または生化学妊娠に終わった卵子では卵胞液中のTMAO 濃度との関連は認められなかった。以上の結果から、卵胞液中のTMAO 濃度は胚の質の負の予測因子となる可能性が示された。食事から摂取され、腸内細菌によって代謝された産物が卵胞液中に移行し、卵子の発育に影響を及ぼすと考えられる。卵胞液中のTMAO 濃度と生化学妊娠に関連がみられなかった原因として、妊娠には様々な因子が影響することや、十分な検出力を保証する妊娠症例数ではなかった可能性がある。

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全胚凍結IVF周期の卵巣刺激:システマティックレビュー
Ovarian stimulation for freeze-all IVF cycles: a systematic review

Mizrachi Y, Horowitz E, Farhi J, Raziel A, Weissman A
Hum Reprod Update 2020年 26巻 1号 119〜136

新鮮胚移植周期と比べて凍結胚移植周期には利点があることから、全胚凍結IVF 周期が多く施行されるようになった。しかし、その到達目標や卵巣刺激法は確立されていない。本研究では、全胚凍結周期の卵巣刺激に関する様々な問題を明らかにするため、2000年1月~2019年1月に報告された文献のシステマティックレビューを行った。原著論文3,292件のうち69件(全胚凍結17件、卵子提供21件、凍結胚移植16件、新鮮胚移植15件)を対象とした。有効性と安全性のバランスを考慮すると、全胚凍結周期の採卵数が15~20個となるように卵巣刺激を行うべきである。卵胞発育の同期や治療スケジュールの調整のためには経口避妊薬を前投与してもよい。卵巣刺激は卵胞期初期に開始することが推奨されているが、将来的には全胚凍結周期の黄体期やランダムスタートの卵巣刺激も可能になると考えられる。全胚凍結周期の卵巣刺激に使用するゴナドトロピンの種類についてはデータが不十分である。ゴナドトロピンの投与量については個別に判断し、必要に応じた増量が可能である。全胚凍結周期の下垂体抑制法としてはGnRH アンタゴニストプロトコールが推奨され、トリガーとしてGnRH アゴニストとの併用が適している。GnRH アゴニストとhCG のダブルトリガーは卵子と胚の質を改善する可能性が示唆されているが、卵巣過剰刺激症候群のリスクがあるため、全胚凍結周期での使用についてはさらに検討する必要がある。全胚凍結周期では、トリガーの投与を2~3日遅らせ、採卵数を増やすことが可能である。全胚凍結周期での持続的なE2高値の影響を検討した質の高い研究はなく、質の低いエビデンスにおいて卵子や胚の質、凍結胚移植の転帰に対する持続的E2高値の悪影響は示されていない。卵胞期後期でのP4値の上昇はその後の凍結胚移植の転帰に悪影響を及ぼさないことが示唆されており、卵巣刺激時のP4値が上昇しても採卵や胚の凍結保存を中止するべきではないが、卵子や胚の質に及ぼす影響をさらに検討する必要がある。

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ビタミンD強化マーガリンを摂取した不妊症女性における出産の可能性:デンマークの集団ベースコホート研究の結果
Chances of live birth after exposure to vitamin D-fortified margarine in women with fertility problems:results from a Danish population-based cohort study

Jensen A, Nielsen ML, Guleria S, Kjaer SK, Heitmann BL, Kesmodel US
Fertil Steril 2020年 113巻 2号 383〜391

生殖年齢の女性の50%がビタミンD 欠乏症であり、ビタミンD 欠乏症は多嚢胞性卵巣症候群や子宮内膜症などと関連することが報告されている。デンマークでは、冬季の日照不足が原因のビタミンD 欠乏症対策として1962年から1985年5月31日までビタミンD(~50IU/100g)をマーガリンに添加することが義務付けられていた。本研究では、ビタミンD の栄養強化プログラムと不妊症女性の出産との関連を検討するため、1980年6月1日~1991年8月31日にデンマークで不妊症と診断された女性16,212例を対象とする集団ベースコホート研究を行った。診断時期が1980年6月1日~1985年5月31日(ビタミンD 強化期間:第1群)の6,313例(38.9%、年齢中央値28.1歳)、1985年6月1日~1986年8月31日(ビタミンD 強化の影響が残る期間:第2群)の1,404例(8.7%、28.9歳)、1986年9月1日~1991年8月31日(ビタミンD 強化の影響がない期間:第3群)の8,495例(52.4%、29.4歳)に対象を分けた。診断後12ヵ月以内の出産率は、第3群の8.7%と比べ、第1群で14.5%(調整オッズ比1.87、95% 信頼区間1.68~2.08)、第2 群で12.4%(1.52、1.27~1.81)と高かった。また、ビタミンD 強化期間では診断後12ヵ月以内の出産率が安定していたが、栄養強化プログラムの終了後に急速に低下し、その1年後からは緩やかに低下する傾向がみられた。なお、日照時間が長い4~9月は、日照時間が短い10~3月と比べ、診断後12ヵ月以内の出産率の調整オッズ比がわずかに高かったものの、ビタミンD 強化と出産率との関係に対し季節による大きな影響はみられなかった。診断後15ヵ月以内、18ヵ月以内の出産率についても、診断後12ヵ月以内の出産率と同様の結果が得られた。今後、出産率に対するビタミンD の作用機序を研究する必要がある。

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スウェーデンにおいてART妊娠と自然妊娠で生まれた単胎児の乳児期から青年期までの死亡率の比較
Mortality from infancy to adolescence in singleton children conceived from assisted reproductive techniques versus naturally conceived singletons in Sweden

Rodriguez-Wallberg KA, Lundberg FE, Ekberg S, Johansson ALV, Ludvigsson JF, Almqvist C, Cnattingius S, Iliadou AN
Fertil Steril 2020年 113巻 3号 524〜532

ART児の死亡リスクに関する研究は少なく、結果が異なっている。本研究では、1983~2012年にスウェーデンで生まれた単胎児のうち、先天奇形を除く2,847,108例を対象とする集団ベース前方視的コホート研究を行い、乳児期(1歳未満)および小児期(1~18歳)の死亡率を評価した。母親や児の特性に関する共変数の情報が得られた2,813,731例を最終的な解析対象とした。このうち43,320例(1.5%)がART 児であった。追跡期間中央値15.9 年において12,141例が死亡し、1万人‐ 年あたりの死亡率はART 児が4.17、自然妊娠児が3.22 であった。ART 児における1歳未満の死亡は114例(0.26%)であり、自然妊娠児と比べて死亡リスクが高く(調整ハザード比1.45、95%信頼区間1.19~1.77)、特に凍結胚移植でのリスクが高かった(2.30、1.46~3.64)。ART児における生後0~6日の死亡は63例であり、自然妊娠児と比べて死亡リスクが高く(1.33、1.01~1.74)、特に凍結胚移植でのリスク(2.34、1.31~4.18)、胚盤胞移植でのリスク(2.40、1.05~5.48)が高かった。ART 児における生後7~27日の死亡は23例であり、自然妊娠時と比べて、IVFでの死亡リスクが高かった(1.98、1.09~3.61)。ART 児における生後28~364日の死亡は28例であり、全体としてART 児と自然妊娠児の死亡リスクに有意差はみられなかったが、凍結胚移植でのリスクがART児で高かった(2.97、1.32~6.71)。ART児における1~18歳の死亡は35例(0.08%)であり、自然妊娠児と比べて死亡リスクの上昇はみられなかった(0.99、0.70~1.39)。以上の結果から、ART で生まれた単胎児は、生後早期の死亡リスクが高く、特に凍結胚移植での死亡リスクが生後1年まで高いことが示された。

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