作用機序
出産に至るには「排卵」「受精」「着床」「妊娠の維持」のプロセスがあり、このどこかの段階に問題があると出産しにくくなります。ルティナスは「着床」及び「妊娠の維持」のために使用されます。通常、排卵後には黄体から黄体ホルモン(プロゲステロン)が分泌されることで、受精卵が着床し妊娠が維持されるよう、子宮内環境を整えます。しかし、生殖補助医療においては、様々なホルモン剤投与や人工的な採卵により、黄体機能の低下がよく知られています。
ルティナスは不足した黄体ホルモン(プロゲステロン)を補充することで、子宮内膜における受精卵の着床環境を整え、着床後は妊娠を維持します。プロゲステロンは、様々な成長因子、サイトカインなどの調節を介して胚の子宮内膜への着床過程、子宮内膜機能の改善などに関与(以下 図参照)1)していると考えられています。
ルティナスの作用機序
Journal of Endocrinology(2011)210,5-14©2016 Society for Endocrinology Copyright of the translation to Japanese ©Content Ed Net.
- IGF(Insulin-like Growth Factor):インスリン様成長因子 インスリンと配列が高度に類似したペプチド。IGF-1は肝臓から分泌される。細胞成長と発達、DNA合成を調節する。IGF-2は脳、腎臓などから分泌され、IGF-1より特異的な作用をする
- IL(Interleukin):一群のサイトカインで、細胞間コミュニケーションの機能を果たす。IL-1はマクロファージから分泌され急性反応を誘導する。IL-6はマクロファージを刺激して急性反応を誘導する。IL-11は急性期タンパク質を産生させる
- Activin A:FSHの合成と分泌を促進し、月経周期を調節する役割を持ったペプチド。性腺、下垂体などで産生される。
- EGF(Epidermal Growth Factor):上皮成長因子 細胞の成長と増殖に重要な役割をする。HB-EGFは脂肪細胞から分泌されるアディポサイトカイン(生理活性物質)の1つ。
- LIF(Leukemia Inhibitory Factor):白血病阻止因子 細胞の分化を阻害することによって細胞の成長に影響を与えるサイトカインの一種
- TGF-β(Transforming Growth Factor-β):トランスフォーミング増殖因子-β 組織発生、細胞分化、胚発育に重要な役割を果たす。骨芽細胞や間葉細胞の増殖を促進する。
- COX-2(Cyclooxygenase-2):アラキドン酸をプロスタノイドに代謝する過程に関与する酵素。COX-2はサイトカインや増殖因子などの刺激により発現が誘導されることが知られている。
- プロスタグランジン:アラキドン酸から生合成されるエイコサノイドの一つで、強い生理活性を持つ。
- Singh M, et al., J Endocrinol.2011;210:5-14.