「警告、禁忌を含む使用上の注意」等につきましては、DIページをご参照ください。
ミニリンメルト®OD錠50μg/25μgオンライン座談会シリーズ
開 催 2021年8月10日(火)
会 場 ホテルモントレ仙台 5階「アイリス」※感染対策を行い実施しました。
Opening
伊藤 明宏 先生
夜間頻尿は下部尿路症状(LUTS)のなかで最も支障度の高い症状の一つです1)。夜間頻尿とは、夜間に排尿のために1回以上起きなければならない愁訴と「夜間頻尿診療ガイドライン第2版」で定義され、特に夜間2回以上の排尿は良好な睡眠を障害し、QOLを障害します2,3)。滋賀県長浜市の地域住民コホート調査で、夜間頻尿の有症状率は年齢とともに上昇することが示されています(図1)4)。夜間頻尿はQOLの低下5)、睡眠障害6)、うつ7)、転倒・骨折リスクの上昇、死亡率の増加8)にも影響を及ぼします。
男性における夜間多尿による夜間頻尿の治療薬としてミニリンメルト®OD錠50μg/25μgが登場して約2年が経過しました。そこで本座談会では、夜間頻尿治療の現状を理解するとともに、ミニリンメルト®OD錠50μg/25μgの適正使用、患者さんのQOL向上について先生方とディスカッションしていきたいと思います。最初に中川先生、夜間頻尿の病態と疫学データを解説していただけますか。
今回のキーワード
- 夜間頻尿
- 夜間多尿
- QOL向上
- 受診率
- 医薬分業
図1
夜間頻尿の年齢別頻度(ながはまコホート第一期調査)
【試験概要】
対象 30~74歳までの滋賀県長浜市の地域住民約1万人
方法 5年ごとの定期健康診断による疾患罹患情報などの蓄積を2007年より継続的に実施。環境・生活習慣や身体測定と臓器の機能測定、血液学的検査、血液生化学検査、免疫学的検査などの情報を蓄積・解析し、疾患発症の分子機序の解明と疾患の予知・診断バイオマーカーの同定を進めている。
根来宏光.臨泌 2018; 72: 104-110. より作図
Lecture 1
夜間頻尿の病態と疫学データ
中川 晴夫 先生
仙台市の地域住民コホート調査で、夜間頻尿を有する(夜間排尿回数2回以上)高齢者は夜間排尿回数が1回以下の高齢者と比べて、骨折の頻度が約2倍高く、死亡率も高いことが示されました(図2)8)。スウェーデンのフレイル高齢者を対象とした調査では、転倒の約1/8は夜間排尿に伴うトイレへの移動で発生し9)、ルーマニアの調査でも、大腿骨近位部骨折で入院した50歳以上の男性患者307例のうち68例(22%)は夜間排尿に関連して骨折していました10)。高齢者にとっては、夜間頻尿がQOLの低下だけでなく、転倒・骨折につながることが示唆されます。しかし、転倒・骨折のリスクが高くても、夜間頻尿を主訴として受診する患者は少ないといわれています。台湾の調査では、夜間頻尿での受診率は13.1%、夜間排尿回数が3回以上の女性でも受診率は45.5%でした。受診しない主な理由として、夜間頻尿は老化の自然な過程と考えていることが多く、受診するほど深刻な問題と思わないこと、治療可能であることを知らないこともあげられています11)。
夜間頻尿は、夜間多尿、多尿、膀胱蓄尿障害、睡眠障害などが複雑に絡み合っています。「夜間頻尿診療ガイドライン第2版」では、この4つのカテゴリーに分類し、それぞれの原因疾患と治療法について解説しています12)。ベルギーの前向き観察研究によると、夜間排尿回数が2回以上の夜間頻尿が認められる患者では、59%で膀胱容量減少と夜間多尿が合併し、93%で尿量が増加していました13)。
泌尿器科医は、過活動膀胱(OAB)、前立腺肥大症(BPH)、間質性膀胱炎、骨盤臓器脱などの膀胱蓄尿障害をメインに考えることが多いですが、実際にはそれらを治療しても夜間頻尿に対して効果が不十分な場合が少なくありません。今後、患者数が最も多いと予想される夜間多尿に対しても検査、治療を進めていくことが重要だと考えています。
図2
夜間頻尿と骨折および死亡率との関連
【試験概要】
対象 宮城県仙台市の70歳以上の住民784人(そのうち夜間頻尿患者359人:45.7%)
方法 健康状態全般に関する聴取により、ベースラインを2003年とし、5年間の死亡および骨折の発生状況を国民健康保険のデータを用いて、夜間頻尿と骨折および死亡との関連についてCox比例ハザードモデルによる多変量解析を実施した。2回以上の夜間排尿を夜間頻尿と定義した。
Nakagawa H, et al. J Urol 2010; 184: 1413-1418.より作図
Discussion
伊藤 中川先生、ありがとうございました。夜間頻尿は転倒・骨折、死亡率に影響を及ぼすことが知られていても、夜間頻尿による受診率が高くないのですね。
中川 その理由として、夜間頻尿は加齢のためと考えていることが大きいと思います。たしかに年齢が上がるほど夜間排尿回数、夜間頻尿の有症状率は増加します。ただ、そこには加齢以外にも何らかの疾患や病態が隠れていることも多く、それが死亡の原因になる病態ではないかと考えています。夜間頻尿が何かの疾患の一つの症状として出ている可能性があることを、医療従事者にも考えていただければと思います。
また、夜間頻尿は治療できることを患者さんが知らないことも大きな問題だと思います。病院に行く前から治らないだろうと諦めている夜間頻尿が治療すれば改善して、それが転倒や骨折の予防にもつながることを多くの方に知っていただくことが、今後重要になると考えています。
伊藤 どのような疾患で夜間頻尿が初期症状として出てくるのでしょうか。
中川 睡眠時無呼吸症候群(SAS)は睡眠障害だけではなく夜間多尿にもなることが知られています。また、心血管系疾患の症状という可能性もあると思います。
伊藤 泌尿器科で夜間頻尿と診断された患者さんで全身疾患がみつかる可能性があります。夜間頻尿は治療できることを啓発することは、夜間頻尿の治療だけではなく、全身疾患の治療にもつながる可能性があり、大事ですね。
棚橋 そうですね、夜間頻尿は治療で改善することを知らない方が多いと思います。積極的に啓発することが重要だと考えています。
伊藤 続いて、海法先生に「夜間頻尿診療ガイドライン第2版」の診療アルゴリズムとミニリンメルト®OD錠50μg/25μgの使用上での留意点について解説していただきます。
Lecture 2
ミニリンメルト®OD錠50μg/25μgの
使用上の留意点
海法 康裕 先生
1 夜間多尿の原因と診療アルゴリズム
夜間多尿の原因は、水分過剰摂取、抗利尿ホルモン日内変動、心血管性、薬剤性多尿です12)。診療で水分過剰摂取を指摘すると、患者さんから「血がドロドロになるのが怖いので」との返答をいただくことが多々あります。飲水負荷(2L/日以上)前後で血液粘稠度に変化はないこと(p=0.002、Student’s t 検定)14)や、多量の水分摂取が虚血性疾患を予防するといったエビデンスはないことを説明しています15)。抗利尿ホルモンの日内変動に関しては、加齢により抗利尿ホルモンであるアルギニンバソプレシン(AVP)の夜間分泌が減少することが、夜間多尿の一因と考えられています16)。
「夜間頻尿診療ガイドライン第2版」の泌尿器科専門医向けアルゴリズムでは、排尿日誌で基本評価を行います17)。排尿日誌に記載された排尿回数や昼間尿量、夜間尿量などで、多尿、夜間多尿、膀胱蓄尿障害などを評価します。
夜間多尿の診療アルゴリズムでは、膀胱蓄尿障害がない場合は、夜間多尿に対する行動療法として、飲水に関する指導が推奨グレードA(行うように強く勧められる)、塩分制限、食事、運動療法などが推奨グレードB(行うように勧められる)とされています18)。それで改善がない場合には、心不全や高血圧、慢性腎臓病、睡眠時呼吸障害などの可能性があれば各領域の専門家へ紹介しますが、それらの可能性がなければ薬物療法を追加します。男性の場合は、ミニリンメルト®OD錠50μg/25μgなどが選択肢となります。
2 ミニリンメルト®OD錠50μg/25μg治療の注意点
ミニリンメルト®OD錠50μg/25μgは、男性で推奨グレードA(行うように強く勧められる)と判定されています18)。国内第Ⅱ相試験では、平均作用持続時間が25μg群で1.00±3.32時間、50μg群で2.40±3.08時間で、プラセボ群に比べて50μg群で有意差が認められました(p=0.018、t 検定)(図3)19,20)。国内第Ⅲ相試験では、12週間投与の就寝後夜間第一排尿(覚醒)までの時間(HUS)のベースラインからの変化量は、25μg群93.37分、50μg群117.60分で、プラセボ群の62.97分に比べて有意な延長が認められました(それぞれp=0.0009、p<0.0001、ベースラインの就寝後第一排尿までの平均時間を共変量、投与群、Visit、年齢層を固定効果としたANCOVAにより解析)21,22)。
ミニリンメルト®OD錠50μg/25μgによる治療の注意点として低ナトリウム血症があり、投与前、1週間以内、1ヵ月後、その後も定期的に血清ナトリウム値を測定し、急激な低下を認めた場合や135mEq/L未満を認めた場合は投薬中止となります。高齢者への25μg、50μg投与で血清ナトリウム値が低下するのは早期であることが報告されています。投与開始から1週間以内、1ヵ月後の血清ナトリウムのモニタリングが低ナトリウム血症の予防に大切であることが示されています23)。
図3
ミニリンメルト®OD錠50μg/25μgの平均作用持続時間(国内第Ⅱ相試験)
100μgの主要評価項目の結果は承認されている「用法及び用量」を上回るため、削除
〔試験概要〕
試験デザイン 多施設共同、無作為化、二重盲検、プラセボ対照、並行群間比較試験
対象 夜間頻尿患者139例(男性74例、女性65例)
投与方法 ミニリンメルト®OD錠10、25、50、100μgまたはプラセボを水負荷下、舌下・水なしで単回投与した。
主要評価項目 尿浸透圧が200mOsm/kgを超えている作用持続時間(最大12時間)
安全性評価項目 有害事象の発現頻度および重症度、臨床的に問題であると判断される臨床検査値およびバイタルサインの異常
統計解析方法 t 検定を用いた。
安全性
副作用 (全患者:女性データを含む)副作用の発現率は、100μg群で8.3%(2/24例)、50μg群で9.1%(2/22例)、25μg群で4.5%(1/22例)であり、その内訳は血中ナトリウム減少が100μg群で8.3%(2/24例)および50μg群で4.5%(1/22例)、血圧上昇が50μg群および25μg群で各4.5%(1/22例)であった。10μg群およびプラセボ群に副作用は認められなかった。本試験において重篤な有害事象および死亡例は認められなかった。
(男性)副作用の発現率は、100μg群で16.7%(2/12例)、50μg群で9.1%(1/11例)であった。10μg群、25μg群およびプラセボ群では認められなかった。
4. 効能又は効果 男性における夜間多尿による夜間頻尿
6. 用法及び用量 成人男性には、通常、1日1回就寝前にデスモプレシンとして50μgを経口投与する。
7. 用法及び用量に関連する注意(抜粋)
7.1 年齢、体重、血清ナトリウム値、心機能等の状態から低ナトリウム血症を発現しやすいと考えられる場合には、デスモプレシンとして25μgから投与を開始することを考慮すること。
社内資料:国内第Ⅱ相試験(CS36試験)[承認時評価資料]
Yamaguchi O, et al. BJU Int 2013; 111: 474-484.[COI:フェリング・ファーマ実施治験]
Discussion
伊藤 海法先生、ありがとうございました。夜間多尿の治療としての行動療法について、患者さんに接する際のコツなどお話しいただけますか。
海法 夜間多尿の行動療法では、飲水量と飲む時間帯が大事だと考えています。夕方以降に摂取した水分は夜間尿量を増やすので、「午前中に水分摂取しましょう」と指導します。また、患者さんは自分の飲水量を自覚していないことが多いので、排尿日誌で飲水量や尿量を自覚してもらうことも必要です。適度な運動も大切で、これからの寒い時期は外を散歩することはなかなか難しいので、家の中でもできる体操やストレッチなどを勧めています。また、高齢者には、昼寝をする場合に、坐位ではなく横になって寝ると昼間尿量が増え、そのぶん夜間尿量を減らせることを教えています。
伊藤 排尿日誌を上手に書いてもらうコツがあれば、教えていただけますか。
海法 形式にとらわれる必要はなく、メモでもいいと話しています。あまり条件をきつくしないほうがいいですね。ただ、必ず1日を通して排尿時間と尿量、起床と就寝時間を記載することは伝えています。
伊藤 棚橋先生は、外来で排尿日誌をどのように指導されていますか。
棚橋 3日分の記録シートと計量用コップを渡します。受け答えの様子から、きちんと記録できるか心配な患者さんの場合には、家族に同行していただいて一緒に記録の仕方を理解してもらうなどしています。
伊藤 行動療法にしても患者さんを診て、それに合わせて評価と治療を行うのが、実臨床として必要ですね。続きまして、棚橋先生に日常診療におけるミニリンメルト®OD錠50μg/25μgの評価と医薬分業の利点を解説していただきたいと思います。
Lecture 3
日常診療におけるミニリンメルト®OD錠
50μg/25μgの評価と医薬分業の利点
棚橋 善克 先生
1 ミニリンメルト®OD錠50μg/25μgの使用成績
海外のデータでは、夜間頻尿患者の約80%は夜間多尿であると報告されています24,25)。夜間多尿による夜間頻尿に対する薬物療法として、西野好則先生がミニリンメルト®OD錠50μgを日常診療で使用した初期成績を発表しており、患者背景なども含め当院の使用経験と重なりますので紹介します26)。
対象は、LUTSを有し、BPHまたはOAB治療でも効果が不十分なことから、夜間多尿による夜間頻尿と診断された男性患者20例(平均年齢77.1±9.4歳)。初診時とBPH・OAB治療後にミニリンメルト®OD錠50μgを追加投与した1週後、4~5週後の比較には、対応のあるt 検定を用いて解析されています。
その結果、夜間多尿指数(NPi)は初診時46.2%から追加1週後28.1%、4~5週後28.3%、夜間排尿回数もそれぞれ4.0回から2.2回、2.3回へと有意な減少が認められました(いずれもp<0.001)(図4)。HUSは初診時95.2分から追加1週後185.5分、4~5週後197.8分へと有意に延長しました(いずれもp<0.001)。就寝後夜間第一排尿量は初診時154.9mLから追加1週後199.3mL、4~5週後237.8mLと有意に増加し(いずれもp<0.001)、夜間尿量は初診時679.8mLから追加1週後457.7mL、4~5週後494.5mLと有意な減少が認められました(いずれもp<0.001)。血清ナトリウム値は、追加前140.2mEq/L、追加1週後139.2mEq/Lでした。
安全性については、西野先生のデータでは1例が追加1週後に血清ナトリウム値が135mEq/L未満になり、もう1例は追加28日目に浮腫を認め、それぞれ投与を中止しましたが、その後回復しました。血清ナトリウム値の測定は投与1週目、1ヵ月、それ以降も定期的に行う必要があると考えられます。
図4
BPH/OAB治療効果不十分例にミニリンメルトを追加投与した際の夜間排尿回数の変化
( ):例数、追加後:低用量デスモプレシン追加投与後
目的 LUTSを有し、夜間多尿による夜間頻尿症と診断された成人男性患者に対し、前立腺肥大症(BPH)または過活動膀胱(OAB)治療で効果不十分のため、低用量デスモプレシンである50μg/日を追加投与したときの初期成績を検討する。
対象 2019年9月から2020年2月までに西野クリニックを受診し、BPHまたはOAB治療を行うも効果不十分のため、追加で低用量デスモプレシン投与を行った患者20例
投与方法 低用量デスモプレシン50μgを1日1回就寝前に水なしで服用した。高齢者は一般的に生理機能が低下していることから、安全面に配慮して25μg1日1回就寝前投与への減量を可とした。
評価項目 有効性:低用量デスモプレシン追加後1週および追加後4~5週の有効性評価について、IPSS、IPSS-QOL、OABSS、アテネ不眠尺度(AIS)、排尿日誌による評価としてNPi、夜間排尿回数、就寝後夜間第一排尿までの時間(HUS)、就寝後夜間第一排尿量、夜間尿量および24時間尿量を検討した。
安全性:血清ナトリウム値のモニタリング、その他の副作用について評価を行った。評価期間中はBPH、OAB症状が悪化していないか確認するため、定期的に尿流量測定と残尿測定を行った。
解析方法 初診時とBPH・OAB治療後、追加後1週、および追加後4~5週との比較について、対応のあるt 検定を用いて比較した。有意水準は両側5%とした。
安全性
評価対象20例における血清ナトリウム値の平均値は、追加前140.2mEq/L、追加後1週は139.2mEq/L。1例において追加後1週に血清ナトリウム値135mEq/L未満を認め投与中止し、その後回復した。また、1例で追加28日目に浮腫を認め投与中止し、翌日に回復した。
6. 用法及び用量 成人男性には、通常、1日1回就寝前にデスモプレシンとして50μgを経口投与する。
7. 用法及び用量に関連する注意(抜粋)
7.1 年齢、体重、血清ナトリウム値、心機能等の状態から低ナトリウム血症を発現しやすいと考えられる場合には、デスモプレシンとして25μgから投与を開始することを考慮すること。
西野好則.泌外 2020; 33: 1211-1217.
2 医薬分業の利点
ミニリンメルト®OD錠50μg/25μgの投与を開始する前に、それまでの服薬内容を確認する必要があります。また、服用をはじめてからも、他院での処方内容が変更になることがあります。このようなケースでは、医薬を分業する利点があります(表1)。薬剤師が毎回お薬手帳を確認して、当院で処方した後に他院で禁忌薬などが新たに処方された場合、疑義照会の問い合わせで当該医療施設と相談して、どちらかの投薬を中止することができます。医薬品のダブルチェックの重要性からも医薬分業の利点は大きいと思います。そうすることで今のところ重篤な副作用は経験していません。
多くの患者さんは、最初は服薬による大きな効果を期待しますが、長い期間の飲水制限などの制約に耐えられなくなる患者さんも少なくないと思われます。コンプライアンスの低い患者さんでも、安全かつ効果的な治療を続けることができれば理想的です。そういう観点からも、ミニリンメルト®OD錠に50μgと25μgの2種類の用量があることに大きな意味があると考えています。たとえば、高齢者には25μgから投与を開始し、その用量である程度の効果が得られるなら、高望みはせずその用量を継続していきます。安全性の確保と治療効果のバランスを考えながら治療を進めていくことが、高齢者の夜間頻尿治療には特に肝要と考えています。
表1
(参考)医薬分業の利点(棚橋よしかつ+泌尿器科)
他院での投薬状況の チェック |
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再診時も他院での 投薬状況 |
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ダブルチェック の重要性 |
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Discussion
伊藤 棚橋先生、ありがとうございました。「夜間頻尿診療ガイドライン第2版」では、行動療法で改善がみられず、心不全や高血圧などの可能性がない男性患者でミニリンメルト®OD錠50μg/25μgなどの薬物療法が追加になっています。棚橋先生は多くの患者さんを診ていて、問診で疾患名がわかるのでしょうか。
棚橋 当院では、電子問診システム(タブレットPC使用)にお薬手帳を自動取り込みさせています。もし、普段使用していない薬があってもこのシステムは薬剤情報とリンクしていますので、容易に服用目的がわかります。このような取り組みで、過去の病歴や他科で治療中の疾患の見逃しが少なくできていると思います。
中川 棚橋先生がおっしゃるように、お薬手帳で禁忌薬剤の有無を確認することはとても重要です。低ナトリウム血症をきたしやすい原疾患の有無は問診だけではわからなくても、明らかに足のむくみがあって、BNPが高値であれば循環器科に紹介するようにしています。
海法 私は、全身疾患についてはカルテで他科受診歴をみるようにしています。
伊藤 棚橋先生も医薬分業の利点をお話いただきましたが、薬剤が処方されていれば病名が付いていますので、それで確認することもできますね。
ミニリンメルト®OD錠50μg/25μgの処方対象患者
伊藤 ミニリンメルト®OD錠50μg/25μgの使用上の留意点や使用成績をお話いただきました。本剤の処方対象患者についてどのようにお考えでしょうか。
中川 夜間多尿が存在していることが明らかであり、禁忌につながるような心不全などの疾患を持っていなくて、ある程度元気な方だと考えています。投与量も、患者さんにあわせて考えることも必要ではないかと思います。
海法 夜間多尿があり元気な方が対象になりますが、夜間多尿だけで新患として来院される方以外にも、BPHやOABで通院中の方に、夜間多尿が隠れていることが意外にあります。そうした患者さんにもミニリンメルト®OD錠50μg/25μgを使用できるようになればと考えています。
棚橋 夜間多尿を排尿日誌で確認し、BPHやOABを治療しても効果不十分、不変、悪化する方で、睡眠障害などもチェックして使用します。安全性が第一だと考えていますので、1週間、1ヵ月、それ以降も定期的に副作用がないことを確認します。
中川 低ナトリウム血症などの副作用が気になるので使いにくいという方もいるようです。低ナトリウム血症には注意が必要ですが、適切な使い方をすれば、過度に恐れることはなく使用できる薬剤だと思います。
伊藤 本日は、夜間頻尿治療をひも解き、夜間頻尿患者さんのQOL向上を目指してというテーマで、先生方とディスカッションしてきました。患者さんに対して夜間頻尿は改善できる症状であることを啓発することが重要であり、医療従事者としてミニリンメルト®OD錠50μg/25μgの使用上の注意点や処方患者像について、理解が深まる機会になったのではないかと思います。本日は、多くの臨床経験に基づいてお話いただき、ありがとうございました。
文献
略歴(Profile)
司会
東北大学大学院医学系研究科
外科病態学講座泌尿器科学分野 教授
伊藤 明宏 先生
Itoh Akihiro
1990年
東北大学医学部卒業
1990年
東北大学医学部附属病院泌尿器科 研修医
1991〜
1994年
関連病院で研修
1997年
白河厚生総合病院泌尿器科 医長
1999年
東北大学医学部附属病院
1999年
米国ワシントン大学病理生物学 シニアフェロー
2002年
東北大学医学部附属病院 助手
2004年
京都大学医学部附属病院 助手
2005年
東北大学病院 助教
2008年
東北大学病院 講師
2014年
東北大学大学院医学系研究科泌尿器科学分野
准教授
2018年
東北大学大学院医学系研究科泌尿器科学分野 教授
泉中央病院 副院長
中川 晴夫 先生
Nakagawa Haruo
1988年
東北大学医学部卒業
1988年
東北大学医学部附属病院泌尿器科 研修医
1988〜
1996年
関連病院で研修
1998年
仙台市立病院泌尿器科 医長
2000年
東北大学医学部附属病院泌尿器科
2001年
東北大学医学部附属病院 助手
2006年
東北大学病院 講師
2012年
東北大学大学院医学系研究科泌尿器科学分野
准教授
2015年
泉中央病院 副院長
東北医科薬科大学医学部
泌尿器科学講座 准教授
海法 康裕 先生
Kaiho Yasuhiro
1992年
東北大学医学部医学科卒業
1992年
十和田市立中央病院外科 研修医
1994年
東北大学医学部附属病院泌尿器科
2000年
医学博士 取得
2004年
米国Pittsburgh大学泌尿器科研究員
2006年
東北大学大学院医学系研究科外科病態学講座
泌尿器科学分野 助教
2012年
東北大学大学院医学系研究科外科病態学講座
泌尿器科学分野 講師
2017年
東北医科薬科大学医学部泌尿器科学講座 准教授
棚橋よしかつ+泌尿器科
院長
棚橋 善克 先生
Tanahashi Yoshikatsu
1969年
東北大学医学部卒業
1969年
東北大学医学部泌尿器科学教室入局
1969年〜
関連病院で研修
1971年
東北大学医学部附属病院 医員
1976年
東北大学医学部 助手
1977年
福島労災病院泌尿器科 副部長
1978年
東北大学医学部附属病院 助手
1979年
東北大学医学部附属病院 講師
1991年
国家公務員共済組合連合会東北公済病院 科長
1996年
東北大学学際科学研究センター 客員教授
2001年
東北大学医学部 臨床教授
2001年
通産省NEDOプロジェクトリーダー
2004年
棚橋よしかつ+泌尿器科 院長
2005年
東北大学大学院工学研究科 客員教授
2008年
東北大学大学院医工学研究科 客員教授