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「警告、禁忌を含む使用上の注意」等につきましては、DIページをご参照ください。

ミニリンメルト®OD錠50μg/25μgオンライン座談会シリーズ

会 場 ビデオ会議システムを利用したリモート開催

夜間頻尿治療におけるミニリンメルト(R)OD錠50μg/25μgの処方対象患者を探る

Opening

武井 実根雄 先生

 夜間頻尿治療のトピックスとして、2019年に男性における夜間多尿に伴う夜間頻尿に対して低用量デスモプレシン(ミニリンメルト®OD錠50μg/25μg)が保険適用となり、日常診療で使用されています。また、2020年には夜間頻尿診療ガイドラインが改訂され、診療にあたって他科との連携の必要性が提示されています。
 本日は、ミニリンメルト®OD錠50μg/25μgの処方にあたって患者のQOLをいかに向上させるかについて、下荒磯先生と髙橋先生には泌尿器科医の立場から、野村先生には内科医の立場からお話いただき、討論していきたいと思います。最初に私から「夜間頻尿診療ガイドライン第2版」についてご紹介します。

今回のキーワード

  • 夜間頻尿
  • 夜間多尿
  • 抗利尿ホルモン
  • 低ナトリウム血症

講演 1

夜間頻尿診療ガイドライン第2版について

武井 実根雄 先生

 「夜間頻尿診療ガイドライン第2版」の特徴として、一般医と泌尿器科専門医に分けてアルゴリズムを作成し、専門医向けでは排尿日誌が基本評価項目となり、夜間頻尿が複合した病態であることに配慮した内容になっています1)。29のクリニカルクエスチョン(CQ)に臨床的な疑問が集約され、系統的にまとめられています。
 泌尿器科専門医向けのアルゴリズムは、夜間・昼間とも多尿、夜間だけ多尿、夜間・昼間とも多尿なしの3つのカテゴリーに分けられています。夜間多尿に対しては、膀胱蓄尿障害の有無にかかわらず、まず行動療法として飲水指導、塩分制限、運動や食事の指導などを行います。行動療法で効果が得られない場合、心不全、高血圧、慢性腎臓病、睡眠呼吸障害があればそれぞれの専門医に紹介し、連携しながら診療していきます。内科的な問題がなければ、薬物療法を追加します。
 ミニリンメルト®OD錠50μg/25μgは、夜間多尿を伴う夜間頻尿の男性患者に対して推奨グレードA(行うよう強く勧められる)とされています2)。ただ、本剤を処方するうえで、表1に示すような3つの留意点があると考えています。泌尿器科医でも使用経験が少ないことに対しては、基本的な注意を守ることで使用することができると思います。副作用としての低ナトリウム血症に対しては、患者の選択を適切に行い、血清ナトリウム値を確認することが必要です。高齢者には、行動療法(生活指導)の充実と合併疾患への配慮が求められます。
 それでは泌尿器科医の立場から、下荒磯先生と髙橋先生に夜間頻尿に関する日常診療と薬物療法についてお話いただきます。

表1

(参考)ミニリンメルト®OD錠50μg/25μg処方上の留意点と対処法

留意点 対処法
デスモプレシン製剤の
使用経験がない
・高齢者には低用量から開始するなど、基本的注意を守れば処方可能
低ナトリウム血症が怖い ・適切な患者選択と血清ナトリウム値の確認
高齢者でも大丈夫か ・日常臨床では高齢者こそ治療対象
・行動療法(生活指導)の充実と合併疾患への配慮

武井実根雄作成

講演 2

夜間頻尿治療の実際

下荒磯 裕 先生

 夜間多尿に伴う夜間頻尿の治療は泌尿器科専門医向けのアルゴリズム1)に基づいて、まず排尿日誌で基本評価を行います。排尿日誌には、排尿時刻、尿量、尿意切迫感や尿失禁などの症状の有無や程度、起床時刻、就寝時刻などを記録します。排尿日誌を評価する際、65歳を超えていれば夜間多尿指数(NPi)が33%を超えていることを確認します。
 排尿日誌の活用実態に関するアンケート調査の結果を図13)に示します。当院の患者の多くは80代の超高齢者で、排尿日誌を付けるのが難しい場合もありますが、正しい診断と治療には排尿記録が必要と考えています。
 行動療法では1日尿量が20~30mL/kgになるよう飲水指導をしていますが、当院のある枕崎市は脳梗塞が多く、水分を多量に摂取する患者が多いという特徴があり、脳外科医と検討しているところです。また、枕崎市は全国でも有数の高血圧患者が多い地域で、塩分摂取が多い生活を変えていく必要がありますが、実際に変えていく難しさを感じています。さらに、下肢挙上や夕方の歩行・軽行動などの運動療法も指導します。
 薬物療法では、夜間多尿による夜間頻尿の男性患者にミニリンメルト®OD錠50μg/25μgを処方する際は、高齢者の場合は25μgから使用して、効果や副作用をみながら増量するという使い方もしています。

図1

排尿日誌の活用実態

排尿日誌の活用実態

後藤百万 監修.排尿障害プラクティス 2017; 25: 6-13.より作図

講演 3

ミニリンメルト®OD錠50μg/25μgの
有効性と安全性

髙橋 渡 先生

 ミニリンメルトの治療対象としては、LUTSとの併存がない、もしくはLUTS治療後に夜間頻尿が残存しており、NPi>33%かつ夜間排尿回数2回以上の症例と考えます。BPHまたはOAB治療を行っても夜間頻尿が残存する症例を対象にミニリンメルト®OD錠50μg/25μgの投与を検討した西野先生からの報告では、夜間排尿回数は投与前の4.0回から追加後1週に2.2回へと有意な減少(p<0.001、対応のあるt 検定)(図24)、NPiについても投与前46.2%から追加後1週には28.1%へと有意な減少が認められました(p<0.001、対応のあるt 検定)。なお、血清ナトリウム値は、追加前の140.2mEq/Lに対し、追加後1週は139.2mEq/Lでした。1例において追加後1週に血清ナトリウム値135mEq/L未満を認め投与中止し、その後回復しました。このように、ミニリンメルト®OD錠50μg/25μg投与により1週間後に夜間排尿回数が減少し、NPiの低下が確認されました。
 夜間多尿に伴う夜間頻尿では、心疾患、代謝疾患、睡眠時無呼吸症候群、睡眠障害、認知症などを精査する必要がありますが、BPH・OAB治療で効果不十分の場合、ミニリンメルト®OD錠50μg/25μgを投与し、その後に各領域の専門医へ紹介するなどの対応も可能ではないかと考えています。
 安全性について、低ナトリウム血症は血清ナトリウム値が130mEq/Lまでは無症状なことも多く、特に高齢者や腎機能低下者では発現しやすいことも考えられるため、投与1週目のモニタリングが必要です。また低ナトリウム血症のリスクを回避するためにも、飲水指導を患者さんにしっかり行うことも重要です。効果判定や副作用、水分管理を評価するためには薬剤投与後に排尿日誌を記録することも必須と考えております。

図2

BPH/OAB治療効果不十分例にミニリンメルトを追加投与した際の夜間排尿回数の変化

BPH/OAB治療効果不十分例にミニリンメルトを追加投与した際の夜間排尿回数の変化

目的 LUTSを有し、夜間多尿による夜間頻尿症と診断された成人男性患者に対し、前立腺肥大症(BPH)または過活動膀胱(OAB)治療で効果不十分のため、低用量デスモプレシンである50μg/日を追加投与したときの初期成績を検討する。
対象 2019年9月から2020年2月までに西野クリニックを受診し、BPHまたはOAB治療を行うも効果不十分のため、追加で低用量デスモプレシン投与を行った患者20例
投与方法 低用量デスモプレシン50μgを1日1回就寝前に水なしで服用した。高齢者は一般的に生理機能が低下していることから、安全面に配慮して25μg1日1回就寝前投与への減量を可とした。
評価項目 有効性:低用量デスモプレシン追加後1週および追加後4~5週の有効性評価について、IPSS、IPSS-QOL、OABSS、アテネ不眠尺度(AIS)、排尿日誌による評価としてNPi、夜間排尿回数、就寝後夜間第一排尿までの時間(HUS)、就寝後夜間第一排尿量、夜間尿量および24 時間尿量を検討した。
安全性:血清ナトリウム値のモニタリング、その他の副作用について評価を行った。評価期間中はBPH、OAB症状が悪化していないか確認するため、定期的に尿流量測定と残尿測定を行った。
解析方法 初診時とBPH・OAB治療後、追加後1週、および追加後4~5週との比較について、対応のあるt 検定を用いて比較した。有意水準は両側5%とした。

安全性

評価対象20例における血清ナトリウム値の平均値は、追加前140.2mEq/L、追加後1週は139.2mEq/L。1例において追加後1週に血清ナトリウム値135mEq/L未満を認め投与中止し、その後回復した。また、1例で追加28日目に浮腫を認め投与中止し、翌日に回復した。

5. 効能又は効果に関連する注意(抜粋)
本剤投与は、以下の精査及び治療等を行った上でも、夜間多尿指数注)が33%以上、且つ夜間排尿回数が2回以上の場合にのみ考慮すること。
・夜間頻尿の原因には、夜間多尿の他に、前立腺肥大症、過活動膀胱等の膀胱蓄尿障害等があることから、夜間頻尿の原因が夜間多尿のみによることを確認すること。前立腺肥大症及び過活動膀胱で夜間頻尿の症状を呈する場合には当該疾患の治療を行うこと。その上で、夜間頻尿の症状が改善しない場合には、次に示す夜間多尿の精査及び治療を行った上で、本剤の投与の可否を考慮できる。
注)夜間多尿指数: 24時間の尿排出量に対する夜間の尿排出量の割合

6. 用法及び用量 成人男性には、通常、1日1回就寝前にデスモプレシンとして50μgを経口投与する。

7. 用法及び用量に関連する注意(抜粋)

7.1 年齢、体重、血清ナトリウム値、心機能等の状態から低ナトリウム血症を発現しやすいと考えられる場合には、デスモプレシンとして25μgから投与を開始することを考慮すること。

9.8 高齢者 患者の状態を勘案してデスモプレシンとして25μgから投与を開始することも十分に検討すること。また、患者の状態を観察しながら慎重に投与すること。低ナトリウム血症が発現しやすい傾向がある。

西野好則.泌外 2020; 33: 1211-1217.

Discussion

武井 下荒磯先生、髙橋先生ありがとうございました。下荒磯先生の病院は土地柄もあり、高齢者や脳血管障害の方が多いですね。

下荒磯 当院のある枕崎市は鰹節の生産地として有名ですが、かつおだしを使った料理でも濃い味付けを好む高齢者が多いのです。また、推算糸球体濾過量(eGFR)が低い慢性腎臓病では処方できない場合もありました。

武井 高齢者では排尿日誌を付けることを煩わしく感じて、記入漏れなどで詳細なデータを得にくいことがあるかと思いますが、腎機能と低ナトリウム血症の関連について髙橋先生はどのようにお考えですか。

髙橋 高齢者で腎機能が悪い方が低ナトリウム血症を発現しやすいと思います。

武井 それでは、野村先生に内科医の立場から抗利尿ホルモンの作用について解説いただきたいと思います。

講演 4

内科医の立場から抗利尿ホルモンの作用を考える

野村 政壽 先生

1)高齢者で増加する糖尿病と睡眠障害の関係

 糖尿病は加齢とともに増加し、平成28年国民健康・栄養調査によると、70歳以上の約4割は糖尿病もしくはその予備群とされています5)。高齢者では複数疾患が重積し、フレイルも大きな問題になっています。フレイルには身体的、社会的、精神的という多面性があり、夜間頻尿は身体的フレイルの一つと捉えることができます。
 高齢糖尿病患者では心血管合併症が多く、特に慢性心不全症例が増加しています。日本循環器学会と日本糖尿病学会が合同で発表したコンセンサスステートメントでは、糖尿病患者における慢性心不全の診断フローチャートの中で、診断に有用な自覚症状として夜間頻尿が挙げられ、BNP≧100pg/mLあるいはNT-proBNP≧400pg/mLであれば循環器専門医への紹介が推奨されています6)。糖尿病における心不全予防には、生活習慣の改善と危険因子に対する包括的介入が必要とされています。
 われわれが行った外来2型糖尿病患者の横断解析では、睡眠時間が短いほどHbA1cが高く、血糖コントロールが悪いという相関が認められました7)。睡眠障害の大きな原因は夜間頻尿ですので、その対処が必要になります。

2)水・ナトリウム調節機構

 体液量調節機構では、ナトリウムと水はそれぞれ独立したシステムで調節されています。ナトリウム調節では、心不全で腎動脈圧が低下し循環血液量が減少すると、レニン・アンジオテンシン系が亢進し、副腎でアルドステロン分泌が亢進します。アルドステロン亢進によりナトリウムの再吸収が促進し、体液量を増やしレニン分泌を抑制します。
 水のコントロールに関しては浸透圧調節が働きます。血漿の浸透圧が上昇すると、第3脳室底部にある浸透圧受容器がそれを感知してアルギニン・バゾプレッシン(AVP)を分泌し、腎集合尿細管細胞のAVP V2受容体を介して水が再吸収されます。心不全になり循環血液量が減少しても、同様の機序でAVPが分泌され水が再吸収されます。このように、ナトリウムと水はそれぞれ独立した機構により調節されています。
 ミニリンメルトはAVP誘導体であり、AVP V2受容体を活性化させて水の再吸収を促進します。就寝前に服用すると、夜間の過剰な尿の生成を抑制します。ただし、ミニリンメルト®OD錠50μg/25μgを服用するときは低ナトリウム血症に注意する必要があります。
 低ナトリウム血症には、ナトリウムと水がともに喪失し、細胞外液量が減少する場合(図3-A)、水が若干増加し体液量はほぼ正常な場合(図3-B)、ナトリウムと水がともに貯留し浮腫がみられる場合(図3-C)という3つの病態があります(図38)ミニリンメルト®OD錠50μg/25μgを投与する際、特にうっ血性心不全などでナトリウムと水が貯留する病態(図3-C)では注意する必要があります。

図3

低ナトリウム血症の3つの病態

低ナトリウム血症の3つの病態

SIADH:抗利尿ホルモン不適合分泌症候群
抗利尿ホルモンの(過剰)分泌が持続し、体内の水貯留、低ナトリウム血症を呈する。
抗利尿ホルモン分泌は必ずしも高値ではなく、血漿浸透圧が低下しても抗利尿ホルモンの分泌が低下しない。
MRHE:老人性ミネラルコルチコイド反応性低ナトリウム血症
高齢者に特異的にみられる低ナトリウム血症で、SIADHに類似。
病態は、①加齢による腎機能低下のため、ナトリウム保持能力が低下、②レニン・アンジオテンシン・アルドステロン(RAA)系が加齢のために十分に代償できず、③代償的AVP分泌亢進のため、水は保持される。その結果、重度の低ナトリウム血症を呈する。

野村政壽作成
参考資料:山口秀樹ほか.日内会誌 2016; 105: 667-675.

3)夜間多尿と抗利尿ホルモン

 夜間頻尿患者の88%は夜間多尿が原因と報告されています9)。夜間多尿の原因には、水分過剰摂取、薬剤、高血圧、うっ血性心不全、抗利尿ホルモン分泌異常などがあります。
 水の過剰摂取に対する行動療法として、飲水制限を指導します。夜間の水分補給は血液粘稠度を下げますが、脳梗塞を予防するというエビデンスはありません10)。薬剤性多尿に対しては、抗コリン薬やループ利尿薬、抗利尿ホルモン分泌抑制作用のあるCa拮抗薬など、他科で処方された薬剤、服薬状況などを詳細に問診することが重要です。
 高血圧により日中のカテコラミンが上昇すると、夜間のカテコラミンが相対的に低下し、夜間尿量が増加します11)。心不全も高血圧と同様に体液量が増え、ナトリウム利尿ペプチドの分泌が増加するとともに、下半身の浮腫が夜間の臥位で心臓の負担軽減により腎血流が増え、夜間多尿になります12)。また、加齢により睡眠中のAVPが減少して夜間の尿量が増加することも考えられます13)
 ミニリンメルト®OD錠50μg/25μgの国内第III相試験で、投与12週間後の平均夜間尿量はベースラインよりも、50μg群で267.87mL減少、25μg群で225.79mL減少し、いずれもプラセボ群の161.18mL減少に比べて有意差が認められました(それぞれp<0.0001、p<0.0003、ベースラインの平均夜間尿量を共変量、投与群、Visit、年齢層を固定効果としたANCOVA)14,15)
 安全性に関しては、副作用が50μg群で5.5%(6/109例)、25μg群で7.0%(8/115例)、プラセボ群で6.0%(7/117例)に認められ、主な副作用は50μg群で低ナトリウム血症1.8%(2/109例)、25μg群でBNP上昇1.7%(2/115例)でした。中止に至った副作用は、ミニリンメルト®50μg群で低ナトリウム血症1例、25μg群で血中カルシウム減少、肝機能異常がそれぞれ1例でした。重篤な有害事象は、ミニリンメルト®50μg群で麻痺性イレウスが1例、25μg群で膵癌が1例認められましたが治験薬との因果関係は否定されました。本試験において死亡例は認められませんでした。
 ミニリンメルト®OD錠50μg/25μgの作用機序から、低ナトリウム血症やBNP上昇への注意は必要ですが、夜間多尿による夜間頻尿に対して有効と考えています。

ミニリンメルト®OD錠50μg/25μgの処方

ミニリンメルト®OD錠50μg/25μgを
投与する患者の選択

武井 野村先生、ありがとうございました。内科医の立場から多岐にわたるお話をしていただき、ミニリンメルト®OD錠50μg/25μgの有効性、安全性も紹介いただきました。それでは、ミニリンメルト®OD錠50μg/25μgの処方対象患者として、どのような点に気をつけているか、先生方と討論したいと思います。
下荒磯 高齢者では低ナトリウム血症になりやすい素因がありますので、それには注意しています。ミニリンメルト®OD錠50μg/25μgの使用には、尿量のチェックや飲水制限をする必要があると考えています。排尿日誌を付けない患者さんは治療が続かない傾向がありますが、きちんと付けている方は熱心に治療が継続しています。治療継続のためにも、排尿日誌を付ける習慣づけを指導していくことが大切だと思います。
髙橋 患者さんはそれぞれ生活のリズムが違いますので、臥床していつから睡眠が始まっているのか、わからなくて、排尿日誌で夜間頻尿や夜間多尿を分析することが難しい場合もありますね。
武井 糖尿病患者では心不全の可能性が高いですが、BNPが100pg/mLを超えているところでスクリーニングすればよろしいですか。
野村 BNP 100pg/mL、NT-proBNP 400pg/mLより低ければ問題ないと思います。

ミニリンメルト®OD錠50μg/25μgの
市販直後調査

武井 ミニリンメルト®OD錠50μg/25μgの市販直後調査(2019年9月20日~2020年3月19日、1669施設)16)では、50例70件の副作用発現が報告されました。低ナトリウム血症発現時の血清ナトリウム値が115mEq/L未満1例、115~120mEq/L未満3例、120~125mEq/L未満5例はすべて重篤でしたが、125~130mEq/L未満10例、130~135mEq/L未満12例での重篤例はそれぞれ1例ずつでした。投与から低ナトリウム血症発現までの期間は、1週間以内8例、8日~2週間以内8例、15日~1ヵ月以内6例、1ヵ月以上経過して4例で認められました。低ナトリウム血症に対する治療として、12例では治療が行われませんでした。その後、21例が回復、1例が軽快、1例が軽快または回復。回復までの期間は、1~3日が5例、4~6日が6例、7~13日が6例、14日以上2例でした。ミニリンメルト®OD錠50μg/25μgは、基本的な注意を守り、適切に患者を選択して血清ナトリウム値を確認すれば使用することができると思います。
野村 投与前に血清ナトリウム値が低い方には注意が必要ですし、腎機能低下と高齢でも起こりやすくなると思います。

夜間頻尿における内科との連携

武井 内科の先生、開業医の先生方は夜間頻尿や夜間多尿をどのように認識されているのでしょうか。
野村 現状では認識が高いとは言えないと思いますが、日本循環器学会と日本糖尿病学会の合同ステートメントでも心不全の自覚症状として夜間頻尿が取り上げられましたので、今後介入の重要性が認識されていくものと思います。心不全や高血圧の可能性がある場合は内科に紹介していただければと思います。
武井 泌尿器科で循環器疾患がみつかれば内科に相談し、内科の先生が夜間頻尿をチェックされた場合には泌尿器科に紹介いただくという連携が必要ですね。内科で処方される薬剤との調節が必要な場合はあるでしょうか。
野村 患者さんの服薬歴を調べたうえで注意してみていく必要があると考えています。泌尿器科の先生方のお話をお伺いして、患者QOLを高めるためには、行動療法や適正な食生活、塩分摂取の指導に加えて、夜間頻尿への治療介入を含めたトータルケアが重要であるということがわかりました。
髙橋 野村先生には、泌尿器科が夜間頻尿を改善していくうえで、内科医の視点から多くのエビデンスを教えていただき、今後の治療のやりがいにもつながると思いました。
下荒磯 夜間頻尿が心不全の症状として出てきますので、内科の先生方にも夜間頻尿が内科的疾患の症状の一つとして認知されるようになればよいと思います。
武井 本日は、夜間頻尿について、下荒磯先生と髙橋先生には豊富な治療経験に基づき、野村先生には内科医の視点から興味深いお話をしていただき、ありがとうございました。

文献

  • 1)日本排尿機能学会/日本泌尿器科学会(編).夜間頻尿診療ガイドライン 第2版.リッチヒルメディカル; 2020. p.2-9.
  • 2)日本排尿機能学会/日本泌尿器科学会(編).夜間頻尿診療ガイドライン 第2版.リッチヒルメディカル; 2020. p.42-44.
  • 3)後藤百万 監修.排尿障害プラクティス 2017; 25: 6-13.
  • 4)西野好則.泌外 2020; 33: 1211-1217.
  • 5)厚生労働省.平成28年国民健康・栄養調査報告.p.130.
  • 6)日本循環器学会・日本糖尿病学会合同作成委員会.糖代謝異常者における循環器病の診断・予防・治療に関するコンセンサスステートメント.南江堂; 2020.
  • 7)Nakayama H, Nomura M, et al. Intern Med 2021; 60: 681-688.
  • 8)山口秀樹ほか.日内会誌 2016; 105: 667-675.
  • 9)Weiss JP, et al. J Urol 2011; 186: 1358-1363.[フェリング・ファーマ実施治験]
  • 10)岡村菊夫ほか.日老医誌 2005; 42: 557-563.
  • 11)日本排尿機能学会/夜間頻尿診療ガイドライン作成委員会(編).夜間頻尿診療ガイドライン.ブラックウェルパブリッシング; 2009. p.13-22.
  • 12)Sugaya K, et al. Neurourol Urodyn 2008; 27: 205-211.
  • 13)菊地悦啓ほか.日泌尿会誌 1995; 86: 1651-1659.
  • 14)社内資料.男性患者国内第III相試験(130試験)[承認時評価資料].
  • 15)Yamaguchi O, et al. Low Urin Tract Symptoms 2020; 12: 8-19.[フェリング・ファーマ実施治験]
  • 16)ミニリンメルト®OD錠50μg/25μg「市販直後調査」結果概要(調査期間:2019年9月20日~2020年3月19日)

略歴(Profile)

武井 実根雄 先生

司会

原三信病院 泌尿器科
部長

武井 実根雄 先生

Takei Mineo

1981年

徳島大学医学部卒業

1981年

九州大学医学部泌尿器科学教室

1983年

九州厚生年金病院泌尿器科

1984年

国立別府病院泌尿器科

1985年

九州大学医学部泌尿器科

1987年

九州大学医学部 助手

1989年

浜の町病院泌尿器科

1991年

原三信病院

1999年

原三信病院泌尿器科 部長

下荒磯 裕 先生

医療法人厚生会
小原病院泌尿器科

下荒磯 裕 先生

Shimoaraiso Yutaka

2001年

鹿児島大学医学部卒業

2001年

鹿児島大学病院泌尿器科

2014年

鹿児島大学病院泌尿器科 外来医長

2015年

鹿児島大学泌尿器科 助教

2021年

厚生会小原病院泌尿器科

髙橋 渡 先生

健軍熊本泌尿器科
院長

髙橋 渡 先生

Takahashi Wataru

1992年

熊本大学医学部医学科卒業

1992年

熊本大学医学部附属病院泌尿器科 研修医

1993年

宮崎県高千穂町立病院泌尿器科

1994年

熊本大学医学部附属病院泌尿器科 研修医

1994年

熊本大学大学院医学研究科入学

1998年

熊本大学大学院医学研究科卒業

1998年

上天草総合病院泌尿器科 医長

1999年

熊本大学医学部附属病院泌尿器科

2000年

熊本大学医学部附属病院泌尿器科 助手

2005年

熊本大学医学部附属病院泌尿器科 講師

2007年

済生会熊本病院腎泌尿器科

2008年

済生会熊本病院腎泌尿器科 医長

2009年

熊本大学医学部附属病院泌尿器科 講師

2014年

熊本大学大学院生命科学研究部泌尿器科 准教授

2014年

医療法人英山会平山泌尿器科医院 副院長

2016年

医療法人野尻会健軍熊本泌尿器科 副院長

2017年

健軍熊本泌尿器科 院長

2019年

医療法人ウェルビーイング 理事長

野村 政壽 先生

久留米大学医学部
内分泌代謝内科部門
主任教授

野村 政壽 先生

Nomura Masatoshi

1988年

九州大学医学部卒業

1988年

九州大学医学部付属病院/国立別府病院 研修医

1990年

九州大学大学院医学系研究科分子生命科学

1995年

九州大学医学部付属病院第三内科

1996〜
1998年

日本学術振興会特別研究員

1996〜
1999年

米国ハーバード大学医学部MGH心血管研究所
博士研究員

1999年

九州大学病院内分泌代謝・糖尿病内科 助手

2006年

九州大学医学部併任講師

2009年

九州大学病院内分泌代謝・糖尿病内科 講師

2011〜
2014年

佐賀大学医学部非常勤講師

2017年

九州大学大学院医学研究院病態制御内科 准教授

2017年

久留米大学医学部内科学講座内分泌代謝内科 主任教授

2018年

中国医科大学 客員教授

2019年

東京大学医科学研究所付属病院 非常勤講師

2020年

久留米大学病院 副院長、臨床研究センター長

所属は座談会開催時(2021年8月現在)
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