「警告、禁忌を含む使用上の注意」等につきましては、DIページをご参照ください。
ミニリンメルト®OD錠50μg/25μgオンライン座談会シリーズ
開 催 2021年7月10日(土)
会 場 ビデオ会議システムを利用したリモート開催
Opening
松川 宜久 先生
本日は夜間頻尿のスペシャリストの先生方に、実臨床の立場から排尿日誌と飲水指導、ミニリンメルト®OD錠50μg/25μg登場による診療の変化、初期投与成績などについてディスカッションしていただき、夜間頻尿診療の質の向上につながるようにしたいと思っています。最初に、近藤先生から、排尿日誌記載への取り組みと飲水指導について紹介いただけますか。
今回のキーワード
- 夜間頻尿
- 夜間多尿
- 排尿日誌
- 行動療法
- 飲水指導
Lecture 1
看護師による
排尿日誌の記載指導、飲水指導
近藤 厚哉 先生
夜間頻尿診療の有用なツールとなる排尿日誌
夜間頻尿とは、夜間に排尿のために1回以上起きなければならない愁訴と「夜間頻尿診療ガイドライン第2版」で定義されています1)。夜間頻尿は、下部尿路症状(LUTS)のなかで最も支障度の高い症状の1つであり、特に夜間2回以上の排尿は良好な睡眠を阻害し、QOLを障害するだけではなく死亡率とも関連することが指摘されています2)。治療により夜間排尿回数が平均2回未満に減れば、患者のリスクも大幅に減ると考えられます。
欧州・北米の臨床試験3)や台湾の研究4)で、夜間頻尿患者の約8割に夜間多尿が認められています。夜間多尿への介入は、夜間頻尿の改善につながる有効なアプローチになりうると考えられます。
泌尿器科専門医向けの夜間頻尿の診療アルゴリズムでは、排尿日誌で膀胱蓄尿障害、多尿、夜間多尿の有無を評価します5)。排尿日誌は、一般的には連続3日間、最低でも2日間の使用が推奨され、正確に記入されれば夜間頻尿の病態診断と治療選択に有用なツールになります。65歳を超える場合、夜間多尿指数(24時間尿量に対する夜間尿量の割合:NPi)が33%を超えると夜間多尿とされています。
日本泌尿器科学会認定専門医50名を対象にしたアンケート調査では、半数以上の患者に排尿日誌による評価を行うと回答したのは18名(36%)にとどまっていました。活用が進まない理由は、患者が排尿日誌の記載を嫌がること、医師が排尿日誌の記載について説明する時間が取れないことでした6)。
看護師による排尿日誌の記載指導
当院では、診察後に看護師が排尿日誌の記載を指導しています。プライバシーが確保されたスペースで、5~10分程度の時間をかけて、週に10名程度の患者に指導しています。排尿日誌を付けることに抵抗感を示す場合には、排尿日誌を付けることが生活習慣の見直し、治療の選択に役立つと説明します。また、排尿日誌の記載と思い起こしによる夜間排尿回数とは必ずしも一致しないことにも注意が必要です。
「夜間頻尿診療ガイドライン第2版」では、排尿日誌は夜間頻尿の病態診断、治療選択、治療効果判定に有用であり、夜間頻尿患者に対してグレードAで推奨されています5)。
飲水指導で推奨される飲水量
水分の多量摂取が虚血性疾患の予防につながるかを検討したシステマティックレビューによると、血液粘稠度の上昇には脱水以外にも重要な複数の要因が関連し、水分を多く摂取することが脳梗塞を予防するというエビデンスは得られませんでした7)。また、飲水負荷(1日2L以上を1週間)をしても血液粘稠度には影響しませんが、夜間排尿回数を有意に増加させることが報告されています(p=0.002、Student’s t 検定)8)。
Taniらの研究では、24時間尿量が30mL/kg以下は夜間多尿の独立因子であり、20mL/kg(体重)以下になると脱水を起こす可能性が示されています(表1)9)。「夜間頻尿診療ガイドライン第2版」で、1日尿量が20~25mL/kg(体重)となるように飲水量を調節することが推奨されています10)。
表1
飲水量の基準
ロジスティック回帰分析
Taniらの研究9)では、体重あたりの24時間尿量の増加は、夜間多尿の独立因子であった。この研究では、24時間尿量が30mL/kg以下は夜間多尿の独立因子であり、20mL/kg以下になると脱水を起こす可能性が示された。そのため、夜間多尿による夜間頻尿患者には24時間尿量を20~30mL/kg(体重が70kgならば1,400~2,100mL)に維持することが勧められる。
Tani M, et al. Int J Urol 2008; 15: 151-154.より作表
Discussion
松川 近藤先生、ありがとうございました。排尿日誌の説明はすべて看護師が行っているのですか。
近藤 外来で患者さんに排尿状態を知りたいので記録を付けてくださいとお話ししてから、看護師が別室で説明します。
松川 排尿日誌を説明すると、患者さんが嫌がって来院しなくなることはありませんか。
永江 排尿日誌を付けるのが面倒に感じるという患者さんの気持ちはわかります。実際に排尿日誌を記載する人が多くなかったときもありました。
西野 当院では、排尿障害で来院した人には初診時に全例、排尿日誌の記載を指導しています。排尿日誌には、飲水量や食事、就寝、運動なども記載してもらい、実態を把握するようにしています。ほとんどの患者さんは排尿日誌を付けていただけますが、なかには来院しなくなる方もいます。
松川 看護師が丁寧に説明すると、患者さんもきちんと排尿日誌を付けるようになることを経験しています。説明の仕方が統一されていないと、患者さんの記載内容が異なってくることがありますので、メディカルスタッフへの指導も重要ですね。
西野 とても重要だと思います。医師から看護師に排尿日誌の重要性を説明する機会をつくるといいですね。
松川 排尿日誌記載の指導ビデオを作成し、医師がそのビデオに説明を加えるようにすると、排尿日誌の質が向上することも考えられます。近藤先生に飲水指導について解説いただきましたが、飲水量について、どのように患者さんに指導されていますか。
西野 尿量が多い人には、計量コップを渡して自宅で飲水量を正確に測るように話し、そのうえで体重1kgあたりの飲水量を説明しています。
永江 私は、体重×2.5%、60kgならば1,500mLを飲水量の目安とするように説明しています。そして、夕方以降のアルコールやカフェイン摂取の話をします。行動療法では、その人が実際にできそうかどうかを見通すことが、長続きするために必要です。患者さんが自分で取捨選択するような雰囲気をつくることもポイントだと思います。
松川 患者さん個々に合わせた適切な行動療法を選択していくことも重要だと思います。次は、永江先生から、実臨床で
ミニリンメルト®OD錠50μg/25μgの適用をどのように判断し、そのタスクを分担化しているのか、お話しいただけますか。
Lecture 2
ミニリンメルト®OD錠50μg/25μgの適応判断、
開始に必要なタスク
—臨床現場における分担化
永江 浩史 先生
ミニリンメルト®OD錠50μg/25μgによる
夜間頻尿診療の変化
ミニリンメルト®OD錠50μg/25μgが上市される以前は、初期対応として、膀胱蓄尿障害への薬物治療を優先し、排尿日誌の実践は多かったとはいえませんでした。行動療法も初期治療段階では多くなく、その評価も十分とはいえませんでした。
ミニリンメルト®OD錠50μg/25μg投与は、排尿日誌での夜間多尿の確認、行動療法、投与禁忌事項のチェックを十分に行ってから開始します。当院では、その投与条件に準じた診療を増やした結果、初期対応で排尿日誌の記載から入ることが増え、前立腺肥大症(BPH)治療薬などの初回薬物治療の効果が不良な患者さん全員に排尿日誌を付けてもらいます。行動療法として、初期治療時から飲水指導、運動療法、日中の下肢拳上、睡眠障害への衛生指導(認知行動療法)を積極的に実践し、行動療法の評価も国際前立腺症状スコア(IPSS)/過活動膀胱症状スコア(OABSS)に排尿日誌を加えて行っています。
そのプロセスで、夜間多尿患者の多さと行動療法の有効性を感じています。当院では膀胱蓄尿障害の多くに前立腺肥大症治療薬を使用していますが、そのなかで夜間排尿回数が2回以上の患者109例を対象に排尿日誌で調べたところ、93%は夜間多尿でした(図1)3,4)。
また、ミニリンメルト®OD錠50μg/25μgは夜間頻尿に対して有用ですが、禁忌事項チェックと投与初期のモニタリングも重要だと考えています。禁忌事項のうち、低ナトリウム血症、心不全の既往、中等度以上の腎機能障害は採血で、習慣性または心因性の多飲症は排尿日誌で確認できます。併用薬の禁忌については薬剤師の協力を得て確認しています。
当院でミニリンメルト®OD錠50μg/25μgを投与した50例(平均年齢77.6±6.3歳)のうち、12例(24%)で低ナトリウム血症が発生しました。低ナトリウム血症の予測因子を多変量解析したところ、投与前ナトリウム値138mEq/L以下と多飲傾向の患者に留意する必要があることがわかりました。このような点を踏まえて慎重にモニタリングすれば、より多くの男性高齢患者に対して、ミニリンメルト®OD錠50μg/25μgを用いた夜間頻尿の緩和が可能になると考えています。
図1
夜間頻尿患者における夜間多尿を有する割合(一部海外データを含む)
※膀胱蓄尿障害薬物療法後に夜間排尿回数が十分軽減しない(≧2回)男性LUTS患者
3) Weiss JP, et al. J Urol 2011; 186: 1358‒1363.より作図(フェリング・ファーマ実施治験)
4) Chang SC, et al. Urology 2006; 67: 541‒544.より作図
夜間頻尿診療の業務分担
当院では、夜間頻尿診療の仕事量が増加しましたので、表2に示すように分担しています。排尿日誌は院内薬剤師、看護師、事務が説明し、院内薬剤師がNPiを算出します。行動療法の説明は医師と院内薬剤師、評価は医師が行います。ミニリンメルト®OD錠50μg/25μgの禁忌事項チェックについては、採血が看護師、併用禁忌薬は主に院外薬剤師、投与開始前の服薬指導と開始後の副作用モニタリングは薬剤師が担当します。
できるだけ多くの夜間頻尿患者さんの症状緩和のためには、排尿日誌による夜間多尿の評価、行動療法の実践、ミニリンメルト®OD錠50μg/25μgの適正・安全かつ積極的な活用が鍵になると思います。これらの作業を最大限かつ効率的に行うために、多職種と施設間で業務分担と連携を進めることが大事だと強く感じています。
表2
(参考)多職種チーム医療による夜間頻尿診療の業務分担
(ながえ前立腺ケアクリニック)
†:ミニリンメルト®OD錠50μg /25μg上市後に増えた仕事量
Discussion
松川 行動療法で効果が不十分な患者さんに投薬治療を行い、必ず禁忌を確認し、多職種で作業を分担して安全に使用するのは、素晴らしい夜間頻尿診療だと思います。
近藤 行動療法では、経過観察と効果を聞くのは大事ですね。
永江 そうですね。行動療法は実践率が重要です。どれくらい実践しているか、その確認の仕方も大きなポイントだと思います。また運動と夕方以降のアルコールやカフェインをセットにして指導すると、かなりよくなることもわかってきました。
西野 私も行動療法を全例に行います。1回目の診察は午前中が多いですが、2回目は夕方に来院していただきます。看護師が必ず足を測るように指導して、むくみがあると判断すれば、下肢挙上の説明もします。看護師も自分で1回平均膀胱容量や水分量、夜間排尿回数、就寝後夜間第一排尿(覚醒)までの時間(HUS)などを記録すると、患者さんに真剣に説明するようになります。
近藤 患者さんへの説明が何の役に立つのか、わかるのだと思います。
西野 永江先生のお話のなかで、薬剤師との連携はとてもよいと思いました。
永江 カルテの記事を薬剤師に日常的にFAX送付(患者承認下)していますが、診療計画を理解して早期から対応してくれるというメリットがあることを、ミニリンメルト®OD錠50μg/25μgで経験しました。薬剤師も、診療に自分たちが加わっているという自負を感じているのではないかと思っています。
松川 ミニリンメルト®OD錠50μg/25μgを使用するとき、特に留意されていることを教えていただけますか。
永江 血清ナトリウムのモニタリングのほか、腎機能検査、BNPも測定しています。症例によっては25μgから慎重に投与を開始し、飲水指導が遵守できない症例は投与を控えます。効果発現が早いだけに、特に投与後7日以内の十分な経過観察がポイントです。
松川 低ナトリウム血症やBNP高値などに注意して、どういう人に使うか、モニタリングをどうするか、これからの課題だと思います。永江先生、ありがとうございました。続いて、多くの使用経験があり臨床試験も行われている西野先生から、ミニリンメルト®OD錠50μg/25μgの効果や安全性に関する実臨床のデータをご紹介いただけますか。
Lecture 3
下部尿路症状を有する夜間多尿による
男性夜間頻尿患者に対する
ミニリンメルト®OD錠50μg/25μgの初期成績
西野 好則 先生
夜間頻尿・夜間多尿に存在する疾患
夜間頻尿には膀胱蓄尿障害、多尿・夜間多尿、睡眠障害があり、その背景には複数の疾患が存在することを患者に説明します。夜間多尿でよくみられる一般的な疾患は、循環器疾患、腎機能障害、呼吸器疾患、消化器疾患、血液疾患などです。また、両下肢浮腫(運動機能低下、骨盤内手術)がある人では、ミニリンメルト®OD錠50μg/25μgの投与対象になることがあります。メタボリック症候群や肥満は、多くは行動療法で治療できるのではないかと考えています。
「夜間頻尿診療ガイドライン第2版」で、BNPが100pg/mL以上は注意、200pg/mL以上ならば循環器科に紹介と記載されています5)。私は100pg/mL以上ならば循環器科に紹介するか、内科医の了承を得てから投与しています。
ミニリンメルト®OD錠50μg/25μgの初期成績
LUTSを有し、BPHまたは過活動膀胱(OAB)治療を行っても効果が不十分なため、夜間多尿による夜間頻尿と診断された男性患者20例にミニリンメルト®OD錠50μgを投与した初期成績11)を紹介します。行動療法は初診時から継続して行っています。
20例の平均年齢は77.1±9.4歳、HUSが95.2±43.7分でした。アテネ不眠尺度(AIS)は5.9±1.6点で、睡眠障害(6点以上)のある方が多く含まれていることが示唆されました。初診時とBPH・OAB治療後、追加投与1週後、4~5週後の比較については、対応のある t 検定を用いて解析しました。
NPiは初診時46.2%から投与1週後に28.1%、夜間排尿回数もそれぞれ4.0回から2.2回へと有意に減少し、HUSは95.2分から1週後185.5分、4~5週後197.8分へと有意な延長が認められました(いずれもp<0.001)(図2)11)。就寝後夜間第一排尿量は、初診時154.9mLからBPH・OAB治療後209.3mL、投与1週間後199.3mL、4~5週後237.8mLと有意に増加しました(いずれもp<0.001)。夜間尿量は679.8mLから1週後457.7mL、4~5週後494.5mLと有意に減少しました(いずれもp<0.001)。
安全性に関しては、低ナトリウム血症と浮腫がそれぞれ1例認められましたが、いずれも投与中止後に回復しました。
ミニリンメルト®OD錠50μgの治療が継続した症例には、投与判定時のNPiが40%以上で、HUSが120分未満と短く、就寝後夜間第一排尿量が多いという傾向があり、このような患者選定が適切と考えられました。ミニリンメルト®OD錠50μg投与に際して、BNPが100pg/mL未満ならば治療できると考えます。
夜間頻尿を治療する泌尿器科医は、BPHとOAB、睡眠障害の治療に精通するとともに、代謝経路、体液貯留や全身疾患をある程度把握することも必要になると考えています。
図2
就寝後夜間第一排尿までの時間(HUS)
目的 LUTSを有し、夜間多尿による夜間頻尿症と診断された成人男性患者に対し、前立腺肥大症(BPH)または過活動膀胱(OAB)治療で効果不十分のため、低用量デスモプレシンである50μg/日を追加投与したときの初期成績を検討する。
対象 2019年9月から2020年2月までに西野クリニックを受診し、BPHまたはOAB治療を行うも効果不十分のため、追加で低用量デスモプレシン投与を行った患者20例
投与方法 低用量デスモプレシン50μgを1日1回就寝前に水なしで服用した。高齢者は一般的に生理機能が低下していることから、安全面に配慮して25μg1日1回就寝前投与への減量を可とした。
評価項目 有効性:低用量デスモプレシン追加後1週および追加後4~5週の有効性評価について、IPSS、IPSS-QOL、OABSS、アテネ不眠尺度(AIS)、排尿日誌による評価としてNPi、夜間排尿回数、就寝後夜間第一排尿までの時間(HUS)、就寝後夜間第一排尿量、夜間尿量および24時間尿量を検討した。
安全性 血清ナトリウム値のモニタリング、その他の副作用について評価を行った。評価期間中はBPH、OAB症状が悪化していないか確認するため、定期的に尿流量測定と残尿測定を行った。
解析方法 初診時とBPH・OAB治療後、追加後1週、および追加後4~5週との比較について、対応のあるt 検定を用いて比較した。有意水準は両側5%とした。
5. 効能又は効果に関連する注意(抜粋)
本剤投与は、以下の精査及び治療等を行った上でも、夜間多尿指数注)が33%以上、且つ夜間排尿回数が2回以上の場合にのみ考慮すること。
・夜間頻尿の原因には、夜間多尿の他に、前立腺肥大症、過活動膀胱等の膀胱蓄尿障害等があることから、夜間頻尿の原因が夜間多尿のみによることを確認すること。前立腺肥大症及び過活動膀胱で夜間頻尿の症状を呈する場合には当該疾患の治療を行うこと。その上で、夜間頻尿の症状が改善しない場合には、次に示す夜間多尿の精査及び治療を行った上で、本剤の投与の可否を考慮できる。
注)夜間多尿指数: 24時間の尿排出量に対する夜間の尿排出量の割合
6. 用法及び用量 成人男性には、通常、1日1回就寝前にデスモプレシンとして50μgを経口投与する。
7. 用法及び用量に関連する注意(抜粋)
7.1 年齢、体重、血清ナトリウム値、心機能等の状態から低ナトリウム血症を発現しやすいと考えられる場合には、デスモプレシンとして25μgから投与を開始することを考慮すること。
西野好則.泌外 2020; 33; 1211-1217.
Discussion
松川 ミニリンメルト®OD錠50μg/25μgの有効性について先生のお考えをお聞かせいただけますか。
西野 7割程度は有効だと思っています。患者背景やリスクなどを考慮して、投与に適さない患者さんを除外していくことが重要ですが、夜間多尿による夜間頻尿を改善するためにこの薬を使用していこうと思っています。
永江 私も、効果に満足して服用を続けている人が多いと思います。ただ、低ナトリウム血症になった人で、その自覚症状はなく、効果もみられたのですが、残念ながら中止したという経験があります。
松川 西野先生のご経験で、効果がみられない症例像があればお聞かせいただけますか。
西野 朝方になって何回もトイレに行くような場合はあまり効いてないという印象があります。また、BPHとOABの治療が不十分な人も効果がみられないので、BPHとOABの治療も徹底しなければいけないと思います。
永江 たしかにBPHとOABの治療は重要ですね。行動療法でHUSは延長しますか。
西野 運動療法と飲水指導でHUSが少し延長する人はいますが、それが難しい人もいます。塩分を多く摂取すると水分も取りますので、やはり塩分制限が必要だと思います。
永江 たとえばCa拮抗薬が夜間頻尿に関与するのではないかと考えられたとき、内科医に薬剤の変更を依頼して改善した経験はありますか。
西野 内科の先生に依頼して改善したことはあります。泌尿器科と内科が話し合って連携することも必要だと思います。
松川 私も変更して夜間多尿が改善した方がいます。ミニリンメルト®OD錠50μg/25μgが登場して夜間頻尿診療の質が向上したと思います。本日は、夜間頻尿の診断、排尿日誌、行動療法、薬物療法、多職種連携など総合的な観点から、臨床経験に基づいて有意義なディスカッションができたのではないかと思います。先生方、ありがとうございました。
文献
略歴(Profile)
司会
名古屋大学大学院
医学系研究科泌尿器科 講師
松川 宜久 先生
Matsukawa Yoshihisa
2000年
名古屋大学医学部医学科 卒業
2000年
市立半田病院研修医
2002年
市立半田病院泌尿器科
2002年
社会保険中京病院泌尿器科
2003年
名古屋大学医学部附属病院泌尿器科
2005年
名古屋大学医学部泌尿器科 助手
2006年
名古屋大学大学院医学系研究科泌尿器科 助教
2016年
名古屋大学大学院医学系研究科泌尿器科 講師
刈谷豊田総合病院
泌尿器科 部長
近藤 厚哉 先生
Kondo Atsuya
1994年
岐阜大学医学部 卒業
1994年
碧南市民病院
1998年
名古屋大学医学部附属病院泌尿器科
1999年
岡崎市民病院泌尿器科
2002年
刈谷豊田総合病院泌尿器科
2018年
刈谷豊田総合病院泌尿器科 部長
ながえ前立腺ケアクリニック
院長
永江 浩史 先生
Nagae Hiroshi
1987年
弘前大学医学部 卒業
1987年
浜松医科大学泌尿器科入局
1997年
浜松医科大学泌尿器科 助手
1999年
聖隷三方原病院泌尿器科
2003年
聖隷三方原病院泌尿器科 部長
2011年
ながえ前立腺ケアクリニック 院長
医療法人好誠会
西野クリニック 理事長・院長
西野 好則 先生
Nishino Yoshinori
1990年
高知医科大学医学部 卒業
1990年
岐阜大学医学部泌尿器科
1992年
岐阜赤十字病院泌尿器科
1995年
岐阜大学医学部泌尿器科 助手
2000年
岐阜大学医学部泌尿器科 講師
2002年
東海中央病院泌尿器科 部長
2003年
岐阜市民病院泌尿器科 副部長
2005年
医療法人好誠会西野クリニック 理事長・院長