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「警告、禁忌を含む使用上の注意」等につきましては、DIページをご参照ください。

ミニリンメルト®OD錠50μg/25μgオンライン座談会シリーズ

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夜間頻尿と睡眠障害

Opening

横山 修先生

横山 修 先生

横山 夜間頻尿は、国際禁制学会(ICS)では「夜間に排尿のために1回以上起きなければならない愁訴」と定義され1)、臨床的にはQOL障害の観点から夜間排尿回数2回以上を治療の対象としています。2003年の日本排尿機能学会が行った疫学調査によれば、夜間頻尿(排尿回数1回以上)は下部尿路症状(LUTS)のなかで最も多く、有症状者は4,482万人と推定されています2)。加齢に伴い有症状率は上昇し、夜間排尿回数も増加します。60代では男女とも約80%で夜間頻尿を有し、80代になると排尿回数2回以上は男性で約80%、女性で約70%に認められます3,4)
 本日は夜間頻尿と睡眠に焦点を当てて、3人の先生方とディスカッションしていきたいと思います。

今回のキーワード

  • 夜間頻尿
  • 夜間多尿
  • 睡眠障害
  • 就寝後第1覚醒までの時間(HUS)

Lecture 1

夜間頻尿と睡眠に関する疫学

鳥本 一匡 先生

鳥本 一匡 先生

ウェアラブル・デバイスを用いた夜間頻尿の研究

 ウェアラブル・デバイスの使用者データを用いた研究で、夜間頻尿は加齢とともに増加し、睡眠と生活の質(QOL)の低下に関連することが確認されています5)。この研究で、ウェアラブル・デバイスから取得したデータで夜間頻尿と睡眠の関係を調査できることがわかりました。また、夜間頻尿は若年の生産年齢層でもみられ、若い年齢層ほど夜間頻尿の煩わしさと昼間行動への影響が大きく、睡眠の中断と夜間排尿回数が強く相関することも示されました。
 この研究には、後ろ向きと前向きの二つのデータセットがあります。後ろ向きデータセットでは、25万人(男性57%)のデータ解析により、総睡眠時間(=睡眠時間-中途覚醒時間)は加齢に伴い短縮し、睡眠効率も低下することが明らかになりました。
 前向きのデータセットとして、10項目の質問票を送付し7,141人から回答が得られました。排尿のために夜間に起きた回数が2回以上の割合は、男性で65~74歳が39.6%、75~90歳は55.3%と加齢に伴い増えました。一方、毎晩排尿のために睡眠が中断されて「かなり」あるいは「極めて」煩わしい割合、夜間頻尿が昼間の活動に「かなり」あるいは「極めて」影響した割合は、いずれも若い人ほど多く、高齢者と比べて困窮度が大きいことがわかりました。
 夜間排尿回数が増えると、中途覚醒時間が長くなり、睡眠効率も低下します。また、夜間排尿回数が増えるほど、就寝後夜間第一尿(覚醒)までの時間(HUS)は短くなります(図15)

図1

夜間排尿回数と第1覚醒までの平均時間との関係

夜間排尿回数と第1覚醒までの平均時間との関係

Chapple C, et al. Int J Clin Pracrt 2020; 74: e13495. より作図

解析対象 ウェアラブル・デバイスの使用者で同意が得られた25万人(男性57%)のうち138,674人に10項目の質問票を送付し、7,141人(5.15%)が回答。
方法 質問3:通常、排尿のために夜間に何回起きますか?に対する回答者で、就寝後第1覚醒までの時間について、ウェアラブル・デバイスから取得したデータと、自己申告によるもので比較。

65歳以下の日本人データのみを使用したNOCTURNE study

 上記のデータセットから65歳以下の日本人のみのデータを用いて検討したNOCTURNE studyを紹介します6)。対象とした9,446人のうち男性が7,377人でした。
 前向きデータセットでの質問票への回答では、睡眠の満足度は「あまり満足していない」が42.5%と最も多く、夜間覚醒回数は1回が49.3%、2回が23.8%、3回以上は7.3%。HUSは平均4.53時間。中途覚醒のあとに再び眠るまでの時間は平均49.1±84.7分でした。平均睡眠時間は5.93±0.96時間。夜間頻尿の昼間活動への影響では「全くない」が55.4%と最も多く、「少しある」は22.1%でした。
 これら10項目の質問と排尿回数の関連を調べたところ、排尿回数の増加は、HUSが短くなって総睡眠時間は短縮し、睡眠の質および昼間のQOL悪化と関連していました。
 睡眠の質、夜間排尿回数、昼間のQOLを目的変数とした多変量解析の結果、夜間排尿回数の増加はHUSの短縮や夜間覚醒回数との強い関連が認められました。また、昼間のQOL低下は夜間多尿につながり、睡眠の質の低下が朝の目覚めのすっきり感を減少させることも示されました。

脳波解析を用いた睡眠の評価

 睡眠段階の出現率は若年者と高齢者で大きく異なり、最も深い眠りであるノンレム睡眠のステージ3(N3)は高齢者で減少します。脳波の解析結果から、加齢により睡眠時間は短縮し、中途覚醒の増加、徐波睡眠(深睡眠)の減少がみられます。徐波睡眠が中断されると、睡眠の質が低下しますので、HUSを確保することが重要です。ですから、夜間頻尿の治療選択では、このような年齢の変化を加味して行う必要があります。
  われわれが高齢者を対象に行ったコホート研究で重回帰分析した結果、ピッツバーグ睡眠質問票(PSQI)で評価した睡眠の質は、徐波睡眠時間および国際前立腺症状スコア(IPSS)と関係することが明らかになりました7)

ミニリンメルト®OD錠50μg/25μg治療の睡眠への影響

 われわれは、夜間多尿で睡眠が障害される夜間頻尿患者にミニリンメルト®OD錠50μgを就寝前に経口投与し、夜間尿量の減少と脳波上の睡眠状態への影響を検討するDISTINCT study(jRCTs051190080)を実施しています8)。対象の選択基準は、男性、夜間排尿回数2回以上かつ夜間多尿指数0.33以上、HUS 2.5時間未満、血清Na135mEq/L以上、eGFR 50 mL/min/1.73m²以上です。登録時に血液検査、排尿日誌、脳波測定、PSQI、VAS(Visual Analog Scale)による睡眠の質を測定し、1週間後、1ヵ月後にも同様の検査を行います。現在、症例登録を進めています。

Discussion

横山 若い人のほうが夜間頻尿を煩わしいと感じる人が多いのは、仕事に影響するからでしょうか。

鳥本 それが一つありますし、若い人ほど回復に関わるといわれる深い睡眠の量が多いので、それが夜間頻尿によって減少すると困窮につながると思います。高齢者も夜間頻尿に困っていますが、昼間に活動しない人は睡眠が浅くなりがちで、ぐっすり眠る素地がないのです。そういう人たちは、もともと加齢に伴う睡眠障害があり、LUTSをコントロールしてもQOLが向上しにくいことがあります。

根来 脳波の解析からも、HUSを長くすることが重要ですね。

 若い人の夜間頻尿の治療に難渋することが多くあります。それが夜間多尿によるとしますと、どのような原因が考えられますか。

鳥本 他院での夜間頻尿治療がうまくいかず、私の外来に来られた50代の男性がおられます。夜間頻尿の主な要因は夜間多尿で、高血圧および糖尿病といった生活習慣病に起因した病態と判断しました。血圧と血糖値が管理されても夜間多尿が改善しない患者さんに、ミニリンメルト®OD錠50μg/25μgを使用しました。

横山 ありがとうございました。次に、根来先生に夜間頻尿と概日リズムの関係について解説していただきます。

Lecture 2

概日リズムからみる夜間頻尿

根来 宏光先生

根来 宏光 先生

夜間頻尿と概日リズム

 排尿の概日リズムは、脳の視交叉上核にある中枢時計と、腎臓および膀胱にある末梢時計によって制御されています9〜11)。昼間は、腎臓で産生された尿は膀胱に溜まり、脳が尿意として感知して効率よく排尿され、夜間は脳の覚醒レベルが低下し、腎臓での尿産生が減少し、膀胱の機能的容量は増大します11)。しかし、何らかの要因で排尿に関連する概日リズムが破綻すると、夜間の尿量が増え、膀胱容量が低下し、夜間多尿となって夜間頻尿を発症すると考えられています11〜13)
  高血圧や糖尿病、心疾患、脳血管障害、うつ病などは、夜間頻尿と関連する因子として知られています14)。概日リズムの破綻が全身疾患とも関わって夜間頻尿を引き起こし、夜中にトイレに行くと夜間の光暴露になり、さらに概日リズムの破綻につながるという悪循環をもたらすと考えられます(図215)。このように、夜間頻尿と不眠は深く関連していますが、それらの関連性はまだよくわかっていません。

図2

夜間頻尿による概日リズムの破綻

夜間頻尿による概日リズムの破綻

根来宏光ほか.泌外 2015; 28: 1693-1698. より改変

ながはまコホート研究における夜間頻尿とうつ発症、睡眠障害と排尿症状悪化の知見

 滋賀県長浜市在住の30~74歳の健康な人を対象とした、ながはまコホート研究は、2008~2010年に第1期、2013~2015年に第2期の調査が行われました。第1期でうつ症状がなかった7,247人において、排尿回数依存的に、第2期でうつ症状の発症リスクが増加しています(調整オッズ比は夜間排尿回数0回を基準として、1回1.31、2回1.41、3回2.06、4回以上3.20)。ベースの夜間排尿回数とうつ症状発症には明確な用量依存性を認め、夜間頻尿が重症であるほどうつ症状が発症しやすいことがわかります16)。また、50歳以上を対象とした縦断的解析5,297人の睡眠障害とLUTSの関連では、睡眠障害があるとIPSSの排尿症状(残尿感、尿線途絶、尿勢低下、腹圧排尿)の合計が3以上悪化するリスクになることが示されました(オッズ比1.35、p=0.003またはp<0.05、ロジスティック回帰分析)。この研究では、睡眠薬服用により自覚的な睡眠の質が保たれているグループにおいても排尿症状の悪化を防ぐことは示されませんでした17)。さらに、夜間排尿回数と総死亡率の検討において、夜間排尿回数が増えるにしたがって総死亡率は有意に上昇しました(p<0.001、log-rank test)18)。夜間頻尿はうつ症状や不眠・睡眠障害を引き起こすことで、QOL低下、排尿症状の悪化につながり、さらに死亡リスクを上昇させる可能性があると考えられます。

概日リズムの視点からみた夜間頻尿の治療

 加齢とともに、昼と夜の差が曖昧になって概日リズムの振幅が低下することが知られています。夜中にトイレに行くなどで光暴露があると、振幅の低下は亢進されます。概日リズムの破綻を予防・改善するためには、昼と夜のリズムがより明確となるように①朝に十分な光を浴びる、②昼寝は短時間(30分以内)、③夕方の運動や足の挙上で下肢に貯まった水分を排出、④入浴は就寝1~2時間前、⑤就寝時は低照度に設定する、などの生活習慣の是正が基本となります。
  破綻していく概日リズムを取り戻すことは夜間頻尿の改善にもつながります。一方、生活指導によっても昼夜のリズムが是正しきれず、夜間頻尿が改善されない場合は薬物治療が考えられます。わが国では男性の夜間多尿に対してミニリンメルト®OD錠が臨床使用されています。国内第Ⅲ相試験で、ミニリンメルト®OD錠50μgの12週間投与により夜間排尿回数は1.21回減少し、HUSは117.6分延長しました19,20)。概日リズムの破綻と夜間頻尿がどのように関係しているのか、という視点で検討することも必要だと考えています。

Discussion

横山 ながはまコホート研究では、睡眠薬を服用して睡眠の質がよくなっても排尿症状の悪化を防ぐことはできなかったということですが、睡眠障害と排尿症状はどのように関係していると考えられますか。また蓄尿症状との関連はどうでしたか。

根来 夜間頻尿と不眠が深く関連することは知られています。しかし、睡眠障害がなぜ排尿症状を悪化させるのか、そのメカニズムはよくわかっていません。その点に興味があり、研究を進めているところです。蓄尿症状の悪化も睡眠障害と関連していましたが、排尿症状ほど強い関連性はありませんでした。

横山 概日リズムの破綻には多因子が関与していますが、夜間の尿量を減少させることによって、多因子に影響を及ぼし、結果的に概日リズムを取り戻す可能性はあるのでしょうか。

根来 夜間尿量の減少によりHUSが延長することで、主に睡眠を改善させることになりますので、それがきっかけで多因子に影響を及ぼし、概日リズムを取り戻すことにつながると考えられます21,22)

横山 睡眠障害が長く持続すると高血圧、糖尿病の発症リスクを高めるという研究23)もありますので、睡眠の改善によって概日リズムを取り戻す可能性はあるかもしれないですね。根来先生、ありがとうございました。続いて、林先生にミニリンメルト®OD錠50μg/25μgの初期治療経験についてご紹介いただきます。

Lecture 3

ミニリンメルト®OD錠50μg/25μg
初期治療経験

林 圭一郎先生

林 圭一郎 先生

夜間頻尿の最大の原因である夜間多尿

 夜間頻尿の治療は、夜間排尿回数や年齢だけでなく、患者さん本人の症状や生活スタイルなどもあわせて総合的に判断する必要があると考えています。
  夜間頻尿の最大の原因は夜間多尿です24,25)。夜間多尿の原因として、AVP(アルギニンバゾプレシン誘導体)分泌リズムの異常があれば、ミニリンメルト®OD錠50μg/25μg投与が考えられます。内科的疾患が原因であれば、内科的疾患をコントロールしたうえで、なおも夜間多尿による夜間頻尿があれば、ミニリンメルト®OD錠50μg/25μgによる治療を行いますので、生活指導プラス薬物投与が基本になると思います。

当院における夜間多尿による夜間頻尿に対する
ミニリンメルト®OD錠50μg/25μgの治療経験26)

 対象は、夜間多尿に伴う夜間頻尿を訴え、夜間多尿指数0.33以上の60歳以上の男性25例です。すでに服用している前立腺肥大症治療薬や過活動膀胱治療薬は継続したうえでミニリンメルト®OD錠50μg/25μgを上乗せ投与しました。ミニリンメルト®OD錠50μg/25μgの投与量は原則50μgですが、症例によって担当医の判断で25μgとしました。
 評価項目は、投与前と4週後の夜間排尿回数、夜間多尿指数、HUS、夜間尿量、IPSS、OABSS、残尿量。投与4週間後に、薬剤に対する自己評価(Global Response Assessment:GRA)を投与前と比較し、5段階で評価しました。
 除外基準は、心不全の既往、多飲多尿(平均尿量3,000mL/日以上)、コントロール不良の糖尿病(HbA1c 8.0%以上)、睡眠時無呼吸症候群などの呼吸器疾患、潜在性のうっ血性心不全です。統計学的解析はt検定を用いました。
 患者背景は、平均年齢74.8±8.66歳で、第Ⅲ相試験13)の63.2歳よりも高齢です。IPSSは13.2±7.18で、LUTSに対する内服治療をすでに行っていた方は18例(72%)、合併症は14例(56%)にみられました。夜間排尿回数は3.30±0.97回、夜間多尿指数は0.42±0.09。
 結果は、夜間排尿回数が投与前の3.49±0.99回から4週後に2.61±1.29回と有意に低下し(p=0.006)(図326)、夜間多尿指数は0.42±0.078から0.39±0.079へと低下傾向(p=0.158)を示しました。
 夜間尿量は投与前796.5±270.9mLから4週後700.1±321.4 mL、HUSは投与前159.0±77.7分から4週後188.7±78.2分になりました。

図3

夜間頻尿に対するミニリンメルト®OD錠50μg/25μg投与前後の夜間排尿回数の変化

夜間頻尿に対するミニリンメルト®OD錠50μg/25μg投与前後の夜間排尿回数の変化

林圭一郎ほか.日泌尿会誌 2021; 112: 18-24.より作図
[COI: 本論文はFerring Pharmaceuticals社の資金提供を受けて作成された。]

デザイン 後ろ向き研究
対象 夜間頻尿を主訴とした60歳以上の男性LUTS患者25例。治療薬投与前に72時間以上の排尿日誌により、夜間排尿回数が2回以上かつ夜間多尿指数が0.33以上であることを確認した。解析対象は内服を中止した3例を除く22例で行った。
方法 ミニリンメルト®OD錠50μg/25μgを1日1回就寝前に経口投与した。1回の投与量は原則50μgとしたが、症例により担当医の判断で25μgとした。投与前と4週後の夜間排尿回数、夜間尿量、HUS、就寝後第1排尿量、夜間多尿指数、IPSS、IPSS-QOL、OABSS、残尿量を調査し比較検討した。また、4週後には、患者自身による治療効果の評価を行った。1週後、4週後に問診と血液検査による安全性の評価を行った。
統計学的解析t検定を用い、危険率5%未満を統計学的に有意とした。

 薬剤に対する自己評価は、「良くなっている」が27.2%、「いくらか良くなっている」が45.4%で、あわせて72.6%が有効と評価しました(図426)

図4

ミニリンメルト®OD錠50μg/25μgに関する患者自身の自己評価(参考情報)

ミニリンメルト®OD錠50μg/25μgに関する患者自身の自己評価(参考情報)

林圭一郎ほか.日泌尿会誌 2021; 112: 18-24.より作図
[COI: 本論文はFerring Pharmaceuticals社の資金提供を受けて作成された。]

試験概要は図3を参照
患者自身の薬剤に対する自己評価は、投与前と比較して「良くなっている」、「いくらか良くなっている」、「変わらない」、「いくらか悪くなっている」、「悪くなっている」の5段階で評価した。

 有害事象は7例(28%)にみられ、そのうち投与中止に至った例は4例で、低ナトリウム血症が3例(12%)、口渇が1例(4.0%)でした。低ナトリウム血症の3例の平均年齢は74.6歳と高く、2例は高血圧と脂質異常症も合併していました。投与前の血清ナトリウム値は136~141mEq/Lと正常低値で、平均体重は53.2kgと小柄な男性でした。
 合併症がある高齢者で、体重が軽く、投与前の血清ナトリウム値が140mEq/L以下の場合、ミニリンメルト®OD錠25μgから開始して、血液検査の結果と有効性を考慮しながら増量することが忍容性の観点から望ましいと考えています。本研究の限界として、短期間の後ろ向き研究であり、今後はランダム比較試験によるさらなるエビデンスの構築が必要と考えています。

夜間頻尿に対する薬物治療と生活指導、血清ナトリウム値測定の重要性

 夜間多尿のある症例に対して、飲水制限を含む生活指導を行ったうえで、ミニリンメルト®OD錠50μg/25μg投与を考慮すべきです。ミニリンメルト®OD錠50μg/25μgは夜間排尿回数を改善し、夜間頻尿の薬物治療のキードラッグの一つになると考えられます。ただ、その投与に際し、生活指導とともに血清ナトリウム値のチェックは必須であると考えています。

Discussion

横山 25例の夜間多尿に対する4週間の初期治療で、夜間多尿の改善が認められましたが、有害事象を抑えることも重要です。低ナトリウム血症を起こした人の1日尿量はどうでしたか。

 尿量が多いということはありませんでしたが、高齢者で低体重、合併症がある場合は低ナトリウム血症に対する注意が必要だと思います。

横山 林先生、ありがとうございました。

Closing

横山 修先生

横山 修 先生

 睡眠障害が誘因となって引き起こされる生産性低下による社会的損失は年間3兆665億円、睡眠障害が誘発する交通事故による経済的損失は年間2413億円と推計されています27)。不眠症のタイプを年齢別にみると、入眠困難の頻度は年代による差がありませんが、中途覚醒、早朝覚醒は60歳以上で上昇することが報告されています28)。夜間多尿による夜間頻尿が原因の中途覚醒の抑制には、徐波睡眠、HUSを延長させることが重要で、そのためには夜間多尿を改善する必要があります。
 男性における夜間多尿に対して、ミニリンメルト®OD錠50μg/25μgが臨床使用されています。その使用に際しては、排尿日誌に基づく夜間多尿の正確な診断が必須ですが、適正に使用することで効果が期待されます。
 本日は、ミニリンメルト®OD錠50μg/25μgの夜間頻尿と睡眠への影響をテーマに、実臨床での多くの経験を基にご討論いただき、ありがとうございました。

7. 用法及び用量に関連する注意 7.1 年齢、体重、血清ナトリウム値、心機能等の状態から低ナトリウム血症を発症しやすいと考えられる場合には、デスモプレシンとして25μgから投与を開始することを考慮すること。

文献

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      [COI: 本論文の著者のうち1名はフェリング・ファーマ株式会社の社員である。]
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      [COI: 本試験はFerring Pharmaceuticals社の支援により実施された。]
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      [COI: 本論文はFerring Pharmaceuticals社の資金提供を受けて作成された。]
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  • 28)Kim K, et al. Sleep 2000; 23: 41-47.

略歴(Profile)

横山 修 先生

司会

福井大学器官制御医学講座
泌尿器科学 教授

横山 修 先生

Yokoyama Osamu

1982年

金沢大学医学部卒業

1988年

金沢大学大学院医学研究科修了

1989年

藤田記念病院 医長

1991年

公立加賀中央病院 医長

1992年

金沢大学医学部附属病院 助手

1996年

金沢大学医学部附属病院 講師

1996~
1997年

米国ピッツバーグ大学薬理学教室留学、客員助教授

2002年

福井医科大学医学部泌尿器科学 教授

2003年

福井大学医学部泌尿器科学 教授

2008年

福井大学医学部附属病院 副院長(診療担当)

2016年

福井大学医学部附属病院 腎センター長兼務

鳥本 一匡 先生

奈良県立医科大学
泌尿器科学教室 講師

鳥本 一匡 先生

Torimoto Kazumasa

1996年

奈良県立医科大学卒業

1996年

奈良県立医科大学附属病院臨床研修医(泌尿器科)

1997年

大和高田市立病院泌尿器科

1999年

星ヶ丘厚生年金病院泌尿器科

2001~
2004年

米国ピッツバーグ大学医学部泌尿器科研究室
Research Fellow

2004年

奈良県立医科大学泌尿器科学教室 助手

2006年

奈良県立奈良病院泌尿器科 医長

2010年

奈良県立医科大学泌尿器科学教室 助教

2015年

奈良県立医科大学泌尿器科学教室 学内講師

2019年

奈良県立医科大学泌尿器科学教室 講師

根来 宏光 先生

筑波大学医学医療系
腎泌尿器外科 講師

根来 宏光 先生

Negoro Hiromitsu

2001年

神戸大学医学部卒業

2001年

神戸市立中央市民病院 研修医

2003年

神戸市立中央市民病院 専攻医

2006年

京都大学医学部附属病院

2007年

京都大学大学院医学研究科 大学院生

2011年

Albert Einstein College of Medicine
(Research Fellow)

2013年

京都大学大学院医学研究科泌尿器科学 助教

2018年

筑波大学附属病院腎泌尿器外科 病院講師

2019年

筑波大学腎泌尿器外科 講師

林 圭一郎 先生

昭和大学横浜市北部病院
泌尿器科 助教

林 圭一郎 先生

Hayashi Keiichiro

2009年

岩手医科大学医学部卒業

2009年

昭和大学横浜市北部病院 研修医

2011年

昭和大学泌尿器科学講座 入局

2011年

昭和大学藤が丘病院泌尿器科

2014年

昭和大学江東豊洲病院泌尿器科 助教

2017年

山梨赤十字病院泌尿器科 副部長

2019年

昭和大学横浜市北部病院泌尿器科 助教

所属は座談会開催時(2021年3月現在)
製造販売元-フェリング・ファーマ株式会社、販売提携-キッセイ薬品工業株式会社

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