座談会記録集
泌尿器外科 2020年11月号33(11), 1371〜1377
- 開催 2020年6月7日(日)
- 会場 ビデオ会議システムを利用したリモート開催
男性における夜間多尿による夜間頻尿を適応として、脳下垂体ホルモン製剤ミニリンメルト®OD錠50µg/25µg(一般名:デスモプレシン酢酸塩水和物)の臨床使用が可能になってから約9ヵ月が経過した。同剤は、夜間多尿に対する改善効果が期待できるが、その使用に際しては排尿日誌に基づく夜間多尿の正確な診断が必須である。
また、重大な副作用として低ナトリウム血症や心不全の発現を見逃さないなど、留意すべきことも多い。
本座談会では泌尿器科に加えて内分泌代謝内科と循環器内科の医師にもご参集いただき、ミニリンメルト®OD錠50µg/25µgの適正使用をテーマに、2020年5月に改訂された『夜間頻尿診療ガイドライン[第2版]』の内容も含めてディスカッションしていただいた。
「警告、禁忌を含む使用上の注意」等につきましては、DIページをご参照ください。
泌尿器外科 2020年11月号
座談会記録集
夜間多尿による
夜間頻尿患者さんの治療を考える
髙橋2009年に作成された『夜間頻尿診療ガイドライン』が11年ぶりに改訂され、本年5月に第2版が刊行されました。初版との大きな違いは、全般的な記載の方法としてCQ(clinical question)方式を採用していること、診療アルゴリズムを「一般医向け」と「泌尿器科医向け」に分けていることです。そして「泌尿器科医向け」では排尿日誌を必須としていますが、これはミニリンメルト®OD錠50µg/25µgの臨床応用を考えるうえでも時宜にかなったものと言えるでしょう。なぜなら、ミニリンメルト®OD錠50µg/25µgの使用に際しては、排尿日誌に基づいて夜間多尿を適切に診断することがきわめて重要だからです。
夜間頻尿は「夜間に排尿のために1回以上起きなければならないという愁訴」と定義1)され、その影響は睡眠障害(不眠)、QOLの低下、精神状態、転倒・骨折、死亡率、労働生産性・活力の低下など多彩な方面に及びます2〜8)。夜間頻尿の原因としては多尿、夜間多尿、膀胱蓄尿障害、睡眠障害の大きく4つが挙げられますが、このうち夜間多尿に関しては、夜間頻尿患者の80%程度が夜間多尿を有する9,10)ことが、世界各地域の調査から認められています。
本日は、この夜間多尿による夜間頻尿患者さんの治療について、ミニリンメルト®OD錠50µg/25µgの適正な使用法ということを中心にディスカッションしたいと思います。まず、泌尿器科医の立場で西野先生から、実臨床におけるミニリンメルト®OD錠50µg/25µgの有効性についてお話しいただけますか。
西野男性患者国内第Ⅲ相試験(検証試験)の成績11)では、ミニリンメルト®OD錠50µg/25µgを12週間投与した際の平均夜間排尿回数のベースラインからの変化量(主要評価項目)はそれぞれ−1.21回、−0.96回で、プラセボ群の−0.76回に比べて有意に大きいことが示されています(それぞれp<0.0001、p=0.0143、ベースラインの夜間排尿回数を共変量、投与群、Visit、年齢層を固定効果としたANCOVA)。これはもちろん、ミニリンメルト®OD錠50µg/25µgの投与により夜間尿量が減少したということを反映しています。
夜間頻尿の治療では、就寝後の第一排尿までの時間をいかに延長できるかどうかも重要です。
なぜなら排尿回数が同じでも、第一排尿が就寝後2時間と4時間の場合では、一般的に後者のほうが深睡眠が得られやすく、患者さんの睡眠の質が変わると考えられるからです。ミニリンメルト®OD錠50µg/25µgを12週間投与した際の就眠後第一排尿までの平均時間のベースラインからの変化量(副次評価項目)はそれぞれ117.60分、93.37分で、プラセボ群の62.97分に比べて有意な延長が認められたことが示されています(それぞれp<0.0001、p=0.0009、ベースラインの就眠後第一排尿までの平均時間を共変量、投与群、Visit、年齢層を固定効果としたANCOVA)。
当院は泌尿器科ということもあって、来院される夜間頻尿患者さんのほとんどに前立腺肥大症(BPH)や過活動膀胱(OAB)などの膀胱蓄尿障害がみられます。したがって、まず、その治療を行ったうえで、夜間頻尿の症状が残って困るという患者さんに、改めて排尿日誌を付けていただいています。あわせて水分摂取についての生活指導や行動療法などを行い、泌尿器領域以外の夜間多尿の原因となり得る疾患を精査した後で、夜間多尿による夜間頻尿がある男性患者さんにミニリンメルト®OD錠50µg/25µgを投与しています。
夜間頻尿というのは、患者さんは医師になかなか相談しにくいところがあるようです。また、患者さんを一から見つけるには時間をかけた細かい問診が必要で、これは医師にとっても大変です。そこで当院では、夜間頻尿患者さんを発見する役割の多くを看護師に担当していただいています。
具体的には看護師を中心とする夜間頻尿相談窓口を設けて、患者さんのみならずご家族の方々にも気軽に相談していただけるようにしています。相談の場ではできるだけ栄養士も同席し、必要なら食事の塩分チェックを含めた指導も行います。また、スタッフは患者さんのお宅に伺い、寝室からトイレへの動線なども把握していますので、これがその後の患者さんの指導に役立っています(図1、2、3)。
髙橋ただいまの西野先生のお話に関して、有馬先生や大石先生から何かご質問がございますか。
有馬夜間多尿あるいは夜間頻尿の患者さんは、夜間にどれくらい水を飲む習慣があるものなのでしょうか。
西野私の外来の印象ですが、指導前ですと6割から7割ほどの患者さんは就寝前に水を飲んでいて、起きてトイレに行くたびに飲むという人も3割から4割はいらっしゃるようです。ですから、泌尿器科医としては夜間尿量を減少させるために水は飲まないように指導したいのですが、ただし、合併症の種類などによっては他科の医師から「水を飲むように」と言われていることもあるので、どれくらい水分制限を強く指導してよいかは迷うところです。
大石水分摂取を勧めるエビデンスというのは、それほどないのではないでしょうか。私たち循環器内科でも冠動脈疾患が脱水から起こることは稀であるとわかってきた結果、最近ではあまり水分摂取を言わなくなってきています。
髙橋減塩をすると水分摂取量は減りますね。ですから、私は最近、水分制限の代わりに減塩を強く勧めるようにしています。合併症の種類によっては、水分制限は病態を悪化させたり、薬の効果を修飾したりといったこともあるかもしれませんが、減塩に関してはそうした懸念はほぼないのではないでしょうか。
※ 表は横にスワイプすると全体を表示できます。男性患者国内第Ⅲ相試験の安全性
副作用は、ミニリンメルト®OD錠50µg群5.5%(6/109例)、25µg群7.0%(8/115例)、プラセボ群6.0%(7/117例)に発現しました。主な副作用は、50µg群で低ナトリウム血症1.8%(2例)、25µg群でBNP増加1.7%(2例)であり、プラセボ群では副作用として、動悸、頻脈、消化不良、倦怠感、アルコール性肝疾患、BNP増加、血圧上昇が各0.9%(1例)に認められました。
中止に至った副作用は、50µg群で低ナトリウム血症1例、25µg群で血中カルシウム減少、肝機能異常が各1例でした。
重篤な有害事象は、50µg群で麻痺性イレウスが1例、25µg群で膵癌が1例認められましたが治験薬との因果関係は否定されました。本試験において死亡例は認められませんでした。
髙橋次に有馬先生から、ミニリンメルト®OD錠50µg/25µgを使用するうえでの注意点である低ナトリウム血症についてお話しいただきます。
有馬私たちの体の水分バランスは水分摂取と抗利尿ホルモン(antidiuretic hormone:ADH)によって調節され、体重のほぼ60%に相当する水分が体内に維持されています。
ADHは視床下部で合成された後、下垂体後葉に蓄えられ、必要に応じて血液中に分泌されます。そして、腎臓の集合管のV2受容体に作用して水分の再吸収を促し、抗利尿作用を発揮します。ADHは血管平滑筋のV1a受容体にも作用して血管収縮作用を合わせ持つことから、バソプレシン(vaso=血管、pressin=収縮)とも呼ばれています。
バソプレシンは血清ナトリウム濃度のわずかな変動に反応して分泌が刺激あるいは抑制され、血清ナトリウム濃度はほぼ一定に保たれています。
この関係はきわめて鋭敏で、飲水により血清ナトリウム濃度がわずかに低下しても、バソプレシンの分泌はほぼ止まり、その結果、バソプレシンは血中半減期が15分と短いこともあって、30分くらいで血漿バソプレシン濃度は抗利尿作用が発揮されないレベルにまで低下し、血清ナトリウム濃度は速やかに元に戻ります(図4)。
一方、バソプレシンは血清ナトリウム濃度のみによって制御されているわけではなく、例えば血圧低下、ストレス、嘔気、炎症なども、バソプレシンの分泌を刺激する要因になります。
健常人では通常、血清ナトリウム濃度は140mEq/l前後、血漿バソプレシン濃度は0.5~1pg/mlに維持されています。それが、脱水や何らかの理由で血漿バソプレシン濃度が上昇した場合、約5pg/mlまで達すると尿浸透圧の上限、すなわち最大尿濃縮作用(抗利尿作用)となり、以後、バソプレシンが増えても尿濃縮作用は変わらなくなります12)。
ミニリンメルト®(デスモプレシン)はバソプレシンの化学合成誘導体で、バソプレシンに比べ、V2受容体への親和性・特異性が高く、血中半減期もバソプレシンより長くなっています13)。また、デスモプレシン濃度と尿浸透圧の関係をみた検討では、血漿中デスモプレシン濃度2〜4pg/mlほどで最大尿濃縮作用に達することが示されています14)。
ミニリンメルト®OD錠は国内では、2012年から中枢性尿崩症などの治療に主成分含量の異なる60µg/120µg/240µg製剤注1)が使用されており、60µg製剤では血漿中濃度半減期は平均1.63時間、2pg/mlを上回るのは約3~4時間と報告されています15)注2)。
ミニリンメルト®OD錠50µg/25µg服用後に水分を摂取するとどうなるかですが、デスモプレシンが抗利尿作用を示している間は、寝る前に水分を摂取したり、夜中に起きたときに水分を摂取したりすると、血清ナトリウム濃度が下がっていくことになります(図5)。
このようにミニリンメルト®OD錠50µg/25µgの服用後は、身体に水分が保持されることになるので、少なくとも効果が続いている間は過剰に水分を摂らないように指導することが重要です。朝起きて、排尿した後であれば水分を摂取してもよいと思いますが、夜中に少ししか排尿していない状態で、習慣的に水分を摂るのは避けて欲しいと思います。
また、血清ナトリウム値の測定に関しては、服用してから測定までの時間や測定前の水分摂取量によっても数値が変わる可能性を考慮に入れて、患者さんから聴取していただきたいと思います。
髙橋有馬先生、低ナトリウム血症の一般的な症状について少し補足していただけますか。
有馬低ナトリウム血症では、血漿浸透圧の低下により脳浮腫が生じ、頭痛などの神経症状が現れるのが特徴です。125mEq/lまでは無症状のことも多いですが、125mEq/l以下になると、初期症状として全身倦怠感や頭痛、食欲不振、悪心・嘔吐が現れます。さらに低下すると、動作や反応が緩慢になる、錯乱などが現れ、重症化すると痙攣発作なども現れます16)。ミニリンメルト®OD錠50µg/25µgを投与する場合には患者さんやご家族に初期症状に留意するよう指導するとともに、検査で血清ナトリウム値の急激な低下や目安として135mEq/l未満を認めた場合には投与を中止し、特に120mEq/lを認めた場合には、躊躇せずに内分泌内科医に紹介していただきたいと思います。
髙橋低ナトリウム血症が起きたときには、どのような治療をされるのですか。
有馬血清ナトリウム濃度が120mEq/l以下になるような重症低ナトリウム血症では、3%という濃厚な食塩水を静脈内投与します。ただし、これにより浸透圧性脱髄症候群が引き起こされないように、1日の血清ナトリウム濃度の上昇は10mEq/l以下になるようにとどめています17)。
髙橋ミニリンメルト®OD錠50µg/25µg投与後の低ナトリウム血症の発現を防ぐためには、やはり就寝前やトイレタイムにおける飲水はやめるべきということになりますか。
有馬効果が続いている間は水分を摂らない、これは基本的な指導になるのではと思っています。
髙橋50µgが通常用量ですが、25µgの使い分けについては、どのようにお考えですか。
有馬ミニリンメルト®OD錠50µg/25µgでは高年齢や低体重の患者で低ナトリウム血症が発現しやすい傾向が認められていますので18,19)、高年齢で痩せている方の場合は特に注意して、血清ナトリウム値や全身状態を確認し、25µgからの投与開始を判断するのもきわめて意義のあることだと考えています。25µgで開始後は、安全性と効果の持続時間という考え方を取り入れて、50µgにするかどうかを検討すればよいのではないでしょうか。
髙橋西野先生、ナトリウム値の測定については、どのように実施されていますか?
西野院内でナトリウムを測定するのが一番だとは思うのですが、検査会社に出しても1時間くらいで結果が出るので、迅速検査で測ってもらっています。午前中に採血して、患者さんには一旦帰宅してもらい、午後に結果を連絡して、追加で処方するかを決めています。
有馬先生、低ナトリウム血症を見逃さないためには、ミニリンメルト®OD錠50µg/25µg投与後に血清ナトリウム濃度が最も低下した時点をとらえる必要があると思いますが、そのためには、採血は朝一番に行うべきなのでしょうか。
有馬朝起きた後に何回か排尿すれば、確かに血清ナトリウム濃度はいくらかは上昇すると考えられます。しかし、すべての患者さんで朝一番の採血ができるというわけではありませんから、医師のほうで血清ナトリウム濃度の実測値をそのまま底値と信じるのではなく、採血までの排尿回数などを勘案しながら底値を推測していくというやり方でよいのではないかと考えます。
- 注1)
- ミニリンメルト®OD錠50µg/25µgの効能又は効果は「男性における夜間多尿による夜間頻尿」です。
(夜間多尿指数が33%以上、且つ夜間排尿回数2回以上の場合)
ミニリンメルト®OD錠120µg/240µgは「尿浸透圧あるいは尿比重の低下に伴う夜尿症」に、60µg/120µg/240µgは「中枢性尿崩症」に用いられています。詳細はそれぞれの添付文書等をご参照ください。 - 注2)
- ミニリンメルト®OD錠の薬物動態には線形性が認められており、また、定量下限の問題から50µg/25µg製剤の薬物動態は検討されていません。
- 7.
- 用法及び用量に関連する注意 7.1年齢、体重、血清ナトリウム値、心機能等の状態から低ナトリウム血症を発現しやすいと考えられる場合には、デスモプレシンとして25µgから投与を開始することを考慮すること。
- 8.
- 重要な基本的注意 8.1(抜粋)本剤投与中は投与開始又は増量から1週以内(3~7日)、1ヵ月後、及びその後は定期的に血清ナトリウム値の測定を行い、血清ナトリウム値が急激な低下を認めた場合や目安として135mEq/L未満を認めた場合には、投与を中止すること。
髙橋次に大石先生から、うっ血性心不全について、お話しいただきます。
大石循環器領域から見た尿産生の意義は、ナトリウムの排出と水分の排出の2つが考えられます。ナトリウムも水分も体内に過剰に貯留すると、循環器の機能障害につながります。ナトリウムが過剰に貯留すると排出するために血圧が上昇しますが、これが、常態化したのが高血圧です。特に日本人に多い食塩感受性高血圧の患者さんが食塩制限を怠ると、塩分排出のために昼間だけでなく夜間も高血圧が持続し、尿産生が増え、夜間多尿につながります。
もう一つ、体内の過剰な水分貯留を尿を産生することで負担を軽減する機構が働くのが心不全です。左心不全は、左心室に負荷がかかり、肺のうっ血から呼吸困難や起座呼吸などの症状が現れ、夜間尿と乏尿という相反する症状もみられます。右心不全は右房圧の上昇と体静脈のうっ血により、頚静脈怒張、浮腫などの症状が現れます(図6)。
心不全では心拍出量の低下を補うため、静脈還流や末梢血管抵抗を増やして中枢の主要臓器の血流を確保しようという機構が働いています。しかし、睡眠中に臥位で静脈還流が増えすぎると、かえって心不全を増悪させかねないことから、睡眠中はこの機構の働きを緩徐にするために尿産生・排泄が促進され、夜間多尿となります。一方、低心拍出の心不全では、特に昼間の腎臓の血流が低下し、乏尿がみられることもあります。
以上のように、心不全では病態を形成する要因とそれに適応するための代償性の機構が複雑に絡み合っていますので、治療においては、その代償性の機構を破綻させないような注意が求められます。
夜間多尿の是正だけでなく、それが心不全の病態そのものにどのような影響を与えるかという視点を忘れてはならないでしょう。
髙橋夜間に高血圧が持続している方や心不全の代償機構によって夜間に尿を排出しようとしている患者さんにはミニリンメルト®OD錠50µg/25µgを投与しないこと注3)、その除外が大切ということになりますね。
ミニリンメルト®OD錠50µg/25µgの投与対象となる患者さんの多くは高齢者ですが、高齢者への投与で特に注意すべきことはありますか。
大石静脈還流は筋肉系によっても維持されていますが、フレイルやサルコペニアを伴った高齢者では、筋肉系が弱くなった結果として、静脈還流の維持がより困難になっています。つまり、臥位になった瞬間に思いきり中枢への静脈還流が戻るなど、静脈還流の変動が激しいので、それに影響を与えることにはより細心な注意が必要となります。
西野心不全をチェックするには、泌尿器科としては、どのようなことを行ったらよいでしょうか。
大石まず、心不全の初期症状に注目していただき、左心不全では労作時息切れや起座呼吸、右心不全では下腿や顔面の浮腫、急激な体重増加などを見逃さないようにしていただきたいと思います。
特に浮腫は、目尻のしわがなくなる、手を握ったときに綿を握ったような感じがする、と表現される患者さんもいますので、このような軽微な症状をいかに捉えるかが大切だと思います。
- 注3)
- ミニリンメルト®OD錠50µg/25µgの禁忌の1つとして「心不全又はその既往歴あるいはその疑いのある患者」の記載があります。詳細はDIをご参照ください
また、私たち循環器内科では肺のラ音の聴取と内頚静脈の怒張、下腿浮腫をポイントとして診ています。もし泌尿器科でBNPを測定して100pg/ml以上を認めた場合は治療対象となる心不全の可能性がありますので、一度、専門医に相談していただければと思います(図7)20)。X線や心電図検査はもちろん実施していただければありがたいですが、それだけで心不全が診断できるものではないことも付け加えておきたいと思います。
西野泌尿器科で排尿日誌を活用して診断し、適宜、内科の先生に相談したり診ていただくなど、連携を図ることが大切だと思いました。
大石私は夜間頻尿診療ガイドラインの改訂にも関わらせていただきましたが、その際に排尿日誌の存在を知り、内科医も排尿日誌を活用することも検討すべきではないかと思いました。
髙橋最後に本日のディスカッションを踏まえ、改訂されたばかりの『夜間頻尿診療ガイドライン[第2版]』について、簡略にまとめさせていただきたいと思います。
泌尿器科専門医向けの診療アルゴリズムでは、まず排尿日誌に基づいて患者さんを「多尿」「夜間多尿」「多尿も夜間多尿もなし」に分け、さらに膀胱蓄尿障害の有無を組み合わせて、それぞれの群で治療方針が示されています(図8)。ミニリンメルト®OD錠50µg/25µg投与が適応となるのは夜間多尿がある場合で、まず、膀胱蓄尿障害の有無には関係なく夜間多尿に対する行動療法を行い、膀胱蓄尿障害がある場合はその治療も行います。治療により改善が得られない場合、心不全、高血圧、慢性腎臓病、睡眠呼吸障害などの可能性の有無をチェックします。ミニリンメルト®OD錠50µg/25µgの患者選択では、この基礎疾患の十分な精査が、副作用を回避するうえで非常に重要になります。基礎疾患の可能性がある場合は各領域の専門医へ相談します。
ミニリンメルト®OD錠50µg/25µg投与開始前には血清ナトリウム値を測定し、本剤投与中は投与開始又は増量から1週以内(3~7日)、1ヵ月後、その後は定期的に測定して、継続の是非を判断します。
ミニリンメルト®OD錠50µg/25µgは、『夜間頻尿診療ガイドライン[第2版]』において、夜間多尿に対する薬物療法として唯一、推奨グレード(男性)A「行うよう強く勧められる」とされており、その改善効果に大きく期待が寄せられる薬剤と言えます。
それだけに私たち医師は適正使用に最大限の注意を払い、慎重に有用性のエビデンスを積み重ねていきたいものです。
※ 表は横にスワイプすると全体を表示できます。1)本間之夫、他:日本排尿機能学会誌. 14(2): 278, 2003
2)van Dijk L, et al.:BJU Int. 93(7): 1001-1004, 2004
3)Kupelian V, et al.:Eur Urol. 61(1): 78-84, 2012
4)Coyne KS, et al.:BJU Int. 92(9): 948-954, 2003
5)Yoo SS, et al.:Korean J Urol. 51(11): 757-762, 2010
6)Nakagawa H, et al.:J Urol. 184(4): 1413-1418, 2010
7)Lightner DJ, et al.:BJU Int. 110(6): 848-853, 2012
8)Kobelt G, et al.:BJU Int. 91(3): 190-195, 2003
9)Weiss JP, et al.:J Urol. 186(4): 1358-1363, 2011
10)Chang SC, et al.:Urology. 67(3): 541-544, 2006
11)Yamaguchi O, et al.:Lower Urinary Tract Symptoms.12(1): 8-19, 2020(フェリング・ファーマ実施治験)
12)Robinson AG, et al.:Williams Textbook of Endocrinology, 13th ed., Chapter 10 - Posterior Pituitary, p.300-332, Elsevier,2016 (2020年9月30日閲覧)(https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/B9780323297387000101)
13)Vilhardt H, et al.:Drug Invest. 2(suppl 5): 2-8, 1990
14)Juul KV, et al.:Am J Physiol Renal Physiol. 304(3): F268-F278, 2013(フェリング・ファーマ資金により行われ、著者にフェリング・ファーマ社員が含まれる。)
15)社内資料:健康成人における薬物動態及び薬力学的検討(CS32試験)[承認時評価資料]
16)山路 徹:最新内科学大系 内分泌疾患1 間脳・下垂体疾患 12, 182-188, 1993
17)有馬 寛:日本内科学会雑誌 103(4), 849-854, 2014
18)社内資料:男性患者国内第Ⅱ相(30試験)及び第Ⅲ相(130試験)併合解析
19)社内資料:男性患者国内臨床試験(30、130及び131試験)併合解析における体重層別低ナトリウム血症発現率
20)日本心不全学会「血中BNPやNT-proBNP値を用いた心不全診療の留意点について」
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