調節卵巣刺激時のSARS-CoV-2感染と卵子および胚の転帰との関連
Association of SARS-CoV-2 infection during controlled ovarian stimulation with oocyte- and embryo-related outcomes
Tian F, Li S, Li N, Zhao H, Luo M, Zhang J, Mao Z, Zhang Q, Li R, Tang T, Zhang C, Li Y, Zhang S, Zhao J
JAMA Netw Open 2023年 6巻 7号
SARS-CoV-2感染は妊孕性やART に影響を及ぼすことが報告されているが、不妊治療中の感染におけるART 転帰についての報告は少ない。本研究では、調節卵巣刺激時のSARS-CoV-2感染と卵子および胚の転帰との関連を検討するため、2022年10~12月に中国の7施設においてIVF/ICSI を施行したカップル585組(女性の年齢中央値33歳)を対象とした後方視的コホート研究を行った。調節卵巣刺激時にSARS-CoV-2陽性が認められたカップルは135組(女性のみ陽性33組、男性のみ陽性28組、男女陽性74組)、陰性は450組であった。連続変数の比較には両側t 検定およびMann-Whitney U 検定、カテゴリー変数の比較にはカイ二乗検定およびFisher の正確検定を用いた。卵巣予備能および卵巣反応に群間で有意差はみられなかった。SARS-CoV-2陽性群は陰性群と比べて良好胚の割合(47.3% vs 52.1%、p =0.01)、胚盤胞形成率(33.3% vs 45.3%、p <0.001)、凍結保存可能な胚盤胞の割合(28.2% vs 35.8%、p <0.001)、良好胚盤胞の割合(7.1% vs 11.5%、p <0.001)が有意に低かった。SARS-CoV-2陽性群のうち女性のみ陽性のカップルでは、陰性群と比べ、成熟卵子の割合(58.5% vs79.9%、p <0.01)、2PN のうち分割胚の割合(94.9%vs 97.7%、p <0.01)、良好胚の割合(39.9% vs 52.1%、p <0.01)、胚盤胞形成率(28.6% vs 45.3%、p <0.01)、凍結保存可能な胚盤胞の割合(22.2% vs 35.8%、p <0.01)、良好胚盤胞の割合(6.4% vs 11.5%、p <0.01)が有意に低かった。男女とも陽性のカップルでは、陰性群と比べ、胚盤胞形成率(39.1% vs 45.3%、p <0.01)が有意に低かった。男性のみ陽性のカップルにおいても、陰性群と比べて胚盤胞関連の割合が有意に低かった。年齢、BMI、不妊期間、複数の不妊原因で調整した多変量回帰分析の結果、SARS-CoV-2感染は良好胚盤胞の割合および胚盤胞形成率と負の関連を示した。以上の結果から、調節卵巣刺激時のSARS-CoV-2感染は胚および胚盤胞の質の低下と関連することが示唆された。
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