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「警告、禁忌を含む使用上の注意」等につきましては、DIページをご参照ください。

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夜間頻尿診療の今と未来-夜間頻尿診療ガイドライン第2版が目指すもの-

Opening

石塚 日本排尿機能学会の調査によりますと、40歳以上では夜間排尿回数が1回以上は69.2%、3回以上は13.5%に認められています1)。男性と女性の夜間頻尿によくみられる原因を図1に示します2)。夜間頻尿の原因は多尿、夜間多尿、膀胱蓄尿障害、睡眠障害に大きく分けられますが、これらが複合的に併発することもあり、その治療は困難なことも多いと思われます3)。本座談会では、2020年に改訂された「夜間頻尿診療ガイドライン第2版」をふまえて、夜間頻尿診療の今と未来を考えていきたいと思います。
 最初に三井先生にガイドライン作成委員の立場からガイドライン改訂の背景とポイントについて、続いて皆川先生には超音波検査(US)/尿流測定(UFM)と排尿日誌を用いた診療上の工夫について解説をお願いします。内山先生と山岸先生には開業医の立場から夜間頻尿診療やミニリンメルト®OD錠50μg/25μgの使用経験などについて紹介いただきます。

今回のキーワード

  • 夜間頻尿
  • 夜間多尿
  • 排尿日誌
  • 超音波検査
  • 尿流測定

図1

男性と女性の夜間頻尿によくみられる原因

男性と女性の夜間頻尿によくみられる原因

van Kerrebroeck P, et al. Neurourol Urodyn 2002; 21: 179-183.より作図

夜間頻尿診療ガイドライン改訂の背景とポイント

1 排尿日誌と専門医向けアルゴリズム

三井 2020年9月現在、わが国の65歳以上の高齢者人口は28.7%、75歳以上が14.9%と高齢化が進んでいます4)。夜間頻尿は加齢とともに増加し、80歳を超えると、夜間排尿回数が1回以上は9割を超え、3回以上は男性で約半数、女性で4割近くになると報告されています(図21)。日本排尿機能学会の調査では、夜間頻尿が下部尿路症状(LUTS)の中で最も多い症状でした5)
 今回の「夜間頻尿診療ガイドライン第2版」では、診療アルゴリズムが一般医向けと専門医向けに分けられ、後者では、排尿日誌を必須の基本評価と位置づけ、問題のある症状や所見がなければ、多尿、夜間多尿、多尿・夜間多尿なしの3つのグループに分けて診療を行います6)。3グループとも、膀胱蓄尿障害など夜間頻尿以外のLUTSを認める場合には、その治療を行ったうえで夜間頻尿の精査・治療を行います。
 排尿日誌は以前のガイドラインでは初期評価とされていませんでしたが、夜間頻尿の病態診断、治療選択、治療効果判定に有用で、推奨グレードA(行うように強く勧められる)として今回記載されました6)。ただ、泌尿器科医47名を対象としたアンケート調査では、排尿日誌による評価を「ほとんどの患者に行う」のは9名、「半分以上の患者に行う」は9名にとどまり7)、排尿日誌の活用が今後の課題と考えます。

図2

夜間頻尿と加齢の関係

夜間頻尿と加齢の関係

〔試験概要〕
対象 全国75地点から、無作為に選んだ40歳以上の男女を含む一般世帯から抽出した40歳以上の男女10,096名(解析対象4,570名)
方法 排尿に関する信頼性の高いデータを得るために日本排尿機能学会の研究事業として疫学調査を実施した。2002年11月に調査票を郵送し、対象者が自己記入して返送されたものを解析した。調査項目は昼間頻尿、夜間頻尿、尿勢低下、残尿感、尿意切迫感、切迫性尿失禁、腹圧性尿失禁などこれらの頻度、程度、重症度、QOLへの影響、受診行動について解析した。夜間頻尿は夜間排尿回数(1回以上/3回以上)で評価。

本間之夫ほか. 日排尿機能会誌 2003; 14: 266-277.より作図

2 夜間多尿に対するアルゴリズム

三井 夜間多尿は、高齢者では夜間多尿指数(NPi、夜間尿量/24時間尿量)が33%を超えた場合と定義されています6)。海外のデータによると、夜間多尿が夜間頻尿の原因として最も頻度が高く8,9)、治療の重要性が示唆されます。
 夜間多尿に対する診療アルゴリズム6)では、膀胱蓄尿障害があればその治療を行い、膀胱蓄尿障害がなければ行動療法を行います。行動療法として、飲水指導、塩分制限などが推奨されています10)。ただ、上記治療を行っても効果不良・不変・悪化する場合、心不全、高血圧、慢性腎臓病、睡眠呼吸障害などの可能性があれば各領域の専門医へ紹介し、BNPが100pg/mL以上に上昇した場合は循環器専門医への紹介を考慮します11)。二次的な疾患がない夜間多尿症候群(NPS)では睡眠初期に利尿が生じますので(図312)、睡眠初期の治療が大切です。夜間多尿が生じる背景として、加齢により睡眠中のバソプレシン分泌が減少して夜間尿量が増加することが考えられます13)。一方、慢性腎疾患や心不全、睡眠時無呼吸などによる夜間多尿は、睡眠時間の経過とともに尿量が増加します12)
 ミニリンメルト®OD錠50μg/25μgはアルギニン・バソプレシン(AVP)の誘導体で、就寝前の服用により夜間の過剰な尿の生成を抑制します。「夜間頻尿診療ガイドライン第2版」では、夜間多尿による男性夜間頻尿患者に対して推奨グレードA(行うように強く勧められる)とされています14)
 ミニリンメルト®OD錠50μg/25μgの国内第Ⅲ相試験では、投与1、4、8、12週の平均夜間尿量におけるベースラインからの変化量は、50μg群、25μg群ともプラセボ群に比べて有意な減少が認められました(図415,16)。また、就寝後第一排尿(覚醒)までの時間(HUS)が180分に至った患者さんの割合は、25μg群78%、50μg群82%とプラセボ群の63%よりも有意に多く(それぞれp=0.0010、p=0.0001)、240分に至った割合も25μg群51%、50μg群61%でプラセボ群の32%よりも有意に多いという結果でした(それぞれp=0.0002、p<0.0001、ベースラインの就眠後第一排尿までの平均時間を共変量、投与群、Visit、年齢層を固定効果とした一般化推定方程式により解析)。

図3

利尿が生じる時期(海外データ)

利尿が生じる時期(海外データ)

〔試験概要〕
試験デザイン レトロスペクティブ解析
対象 2008~2018年に米国Veterans Affairsの泌尿器科外来を下部尿路症状のため受診し、排尿日誌で24時間の頻度・尿量記録が確認できた18歳以上の男性患者。
方法 夜間多尿は、夜間尿量が90mL/hr 以上、あるいは夜間多尿指数(NPi)33%以上。昼間利尿率(昼間尿量/覚醒時間)、早期夜間利尿率(就寝後夜間第一排尿量/就寝後夜間第一排尿までの時間)、遅発性夜間利尿率(残存する夜間排尿量/睡眠の残存時間)で比較。

Monaghan TF, et al. Neurourol Urodyn 2020; 39: 785-792.より作図

図4

平均夜間尿量におけるベースラインからの変化量(国内第Ⅲ相試験、副次評価項目)

平均夜間尿量におけるベースラインからの変化量(国内第III相試験、副次評価項目)

最小二乗平均値(95%信頼区間) ***p<0.0001 **p<0.01 *p<0.05(vs. プラセボ群)
ベースラインの平均夜間尿量を共変量、投与群、Visit、年齢層を固定効果とした ANCOVAにより解析

〔試験概要〕
目的 夜間多尿による夜間頻尿の男性患者に対し、ミニリンメルト®OD錠50μgまたは25μgを12週間投与したときの有効性および安全性をプラセボを対照として検討する。
対象 成人男性夜間頻尿※1患者342例(FAS:338例、安全性解析対象集団:341例)。
方法 ミニリンメルト®50μg、25μgまたはプラセボを毎晩、就眠の約1時間前に舌下・水なしで12週間投与。
主要評価項目:投与12週間の平均夜間排尿回数のベースラインからの変化量。
副次評価項目:投与後1、4、8、12週時点の平均夜間排尿回数のベースラインからの変化量、投与12週間および投与後1、4、8、12週時点の就眠後第一排尿までの平均時間のベースラインからの変化量、投与12週間および投与後1、4、8、12週時点の平均夜間尿量のベースラインからの変化量など。
探索的評価項目:投与12週間に就眠後第一排尿までの平均時間が180分、240分、270分に至った患者の割合。
安全性評価項目:有害事象の発現頻度および重症度、臨床的に問題であると判断される臨床検査値およびバイタルサインの異常、24時間尿量。
解析計画 
主要評価項目:3日間の排尿日誌から得られたデータを基に、ベースラインの夜間排尿回数を共変量、投与群、Visit、年齢層を固定効果とする反復測定の共分散分析(ANCOVA)により解析。
副次評価項目:主要評価項目と同様の ANCOVA モデルにより解析した。
探索的評価項目:ベースラインの就眠後第一排尿までの平均時間を共変量、投与群、Visit、年齢層を固定効果とした一般化推定方程式(GEE)により解析。
安全性評価項目:標準的な有害事象および臨床検査値の集計に加え、血清ナトリウム値は125mmol/L以下、126~129mmol/L、130~134mmol/L、135mmol/L以上に区分して発現率を集計した。

有効性

投与12週間の平均夜間排尿回数のベースラインからの変化量(主要評価項目)は、50μg群で1.21回減少、25μg群で0.96回減少し、両群ともプラセボ群の0.76回減少に比べて有意差が認められた(それぞれp<0.0001、p=0.0143)。
検定方法は、ベースラインの夜間排尿回数を共変量とした反復測定の共分散分析。

安全性

本試験において、副作用は50μg群5.5%(6/109例)、25μg群7.0%(8/115例)、プラセボ群6.0%(7/117例)に発現し、主な副作用は、50μg群で低ナトリウム血症1.8%(2例)、25μg群でBNP増加1.7%(2例)であった。プラセボ群では副作用として動悸、頻脈、消化不良、倦怠感、アルコール性肝疾患、BNP増加、血圧上昇が各0.9%(1例)に認められた。中止に至った副作用は、50μg群で低ナトリウム血症1例、25μg群で血中カルシウム減少、肝機能異常が各1例であった。重篤な有害事象は50μg群で麻痺性イレウス1例、25μg群で膵癌1例が認められたが、因果関係は否定された。本試験において死亡例は認められなかった。

※1 一晩あたりの夜間排尿回数2回以上および夜間多尿指数33%以上。重症の過活動膀胱の症状が認められる患者〔過活動膀胱症状質問票(OABSS)12点以上〕、低膀胱容量(1回の最大排尿量が150mL未満)の患者等は除外。

6. 用法及び用量 成人男性には、通常、1日1回就寝前にデスモプレシンとして50μgを経口投与する。

7. 用法及び用量に関連する注意(抜粋)

7.1 年齢、体重、血清ナトリウム値、心機能等の状態から低ナトリウム血症を発現しやすいと考えられる場合には、デスモプレシンとして25μgから投与を開始することを考慮すること。[9.8、11.1.1、17.3 参照]

社内資料:男性患者国内第Ⅲ相試験(130試験)[承認時評価資料]
Yamaguchi O, et al. Low Urin Tract Symptoms 2020; 12: 8-19.[COI:フェリング・ファーマ実施治験]

 一般的な睡眠において、レム睡眠(浅い眠り)とノンレム睡眠(深い眠り)が90分周期で繰り返し(図517)、最初の3時間は深睡眠が多い時間帯といわれています18)。HUSは2~3時間と報告されており19)、睡眠初期の治療効果が示されています。深睡眠が多い時間帯の眠りをどう確保し、睡眠の質を上げていくかについては、まだまだ臨床の現場で使用できる薬剤が少なく、今後も発展が必要な分野と考えます。
石塚 三井先生ありがとうございました。 続いて、皆川先生から排尿日誌と診療上の工夫について紹介していただきます。

図5

一般的な睡眠の経過図

一般的な睡眠の経過図

古池保雄 監修. 基礎からの睡眠医学. 名古屋大学出版会; 2010. p.30-35.より改変

超音波検査(US)/尿流測定(UFM)と排尿日誌 — 診療上の工夫

皆川 排尿日誌は夜間頻尿診療において有用なツールです。ただ、実際には排尿日誌を付けてもらえない場合があります。排尿日誌の記録が困難な原因として、治療意欲の低さ、非協力的な姿勢、ADLや認知力の低さ、多忙などの社会的な困難、膀胱容量の低下などがあります。私は下部尿路疾患診療の初診で、尿検査の前にUSを行い、その後にUFMを行うことがあります。USにより膀胱が虚脱する前の情報が得られ、前立腺肥大症など膀胱の器質的変化が判別でき、重大な疾患を除外できます。また、膀胱壁が5mm以下の正常な膀胱の所見が得られても夜間頻尿がみられる場合、排尿日誌で1日尿量、膀胱容量、睡眠時間などを調べる意義が高くなると考えています。
 UFMのパラメータとして最も重要なのは最大尿流量(Qmax)ですが 、排尿量が150mL以上でないと正確な評価は難しいため、「男性下部尿路症状・前立腺肥大症診療ガイドライン」では複数回の検査が推奨されています20)。このため、初回UFM(iUFM)に注目しています。iUFMで150mL未満の排尿量が少ない患者は、前立腺が大きく、IPSSスコアの蓄尿サブスコアが高く、頻度・尿量記録(FVC)で膀胱容量と1日尿量が少ないことが報告されています(図621)。排尿日誌は夜間頻尿診療に大切ですが、USやUFMで代替もしくは組みあわせることで、患者の状態を確認することも重要と考えています。

図6

初回尿流測定での排尿量と1日尿量の関係(海外データ)

初回尿流測定での排尿量と1日尿量の関係

〔試験概要〕
対象 2016年8月~2017年5月にソウル大学ボラマエ医療センターの泌尿器科外来を下部尿路症状のため初めて受診した蓄尿障害を有する男性 352名。
方法 初回尿流測定での排尿量により4群(68.8mL未満、68.8mL以上150mL未満、150mL以上250mL未満、250mL以上)に分け、排尿日誌で1日尿量、排尿回数、夜間排尿回数などを比較した。
検定法 排尿量に影響を及ぼす因子を単変量および多変量線形回帰分析により解析した。変数減少法(backward elimination method)により、単変量解析でp<0.02であった変数を多変量解析に用いた。p<0.05を統計学的有意とした。

Yoo S, et al. PLOS ONE January 7 2019.
https://doi.org/10.1371/journal.pone.0207208(2021年9月29日閲覧)より作図

排尿日誌の活用、夜間多尿治療の意義

石塚 三井先生、皆川先生、ありがとうございました。山岸先生と内山先生は開業医として夜間頻尿を診療されていますが、排尿日誌取得の難しさはありますか。
山岸 たしかに手間と時間がかかり、なかなか難しいところもありますが、排尿日誌が治療につながることを説明して、協力的になってくれる患者さんには積極的に勧めています。
内山 夜間、2度3度起床することで夜間頻尿による苦痛を訴える患者さんには、「1日尿量などがわかるので付けてみましょう」と排尿日誌を渡しています。
石塚 夜間頻尿の患者数は多いですか。
内山 夜間頻尿を訴える患者さんはとても多いです。LUTSがある場合はその治療を行い、それでも夜間頻尿が改善しないときは、排尿日誌を確認しながら治療しています。
山岸 当院のある長野市でも高齢化が進み、夜間多尿による夜間頻尿の患者さんが非常に多いですね。皆川先生が話されたようにUSを行ったり、患者さんの症状を診ながら対応しているのが現状です。
石塚 診療アルゴリズムや生活指導についてはどのようにお考えですか。
内山 多尿、夜間多尿の有無で診療アルゴリズムを分けるのはとてもよいと思います。まず症状を聞いて、LUTSがあればUSやUFMを行うことが多いですね。水分制限をするときに、患者さんは自分の飲水量がわからないという問題があります。そのときは「喉が渇くように感じたら、水分を摂ってください」と指導しています。
山岸 多尿の場合は排尿日誌を付けていただくようにしています。それを参考にしながら、水分制限や就寝前にむくみを取るように指導すると、効果があります。そこにミニリンメルト®OD錠50μg/25μgを組み合わせることも考慮して治療しています。
石塚 ミニリンメルト®OD錠50μg/25μgは投与1週後から夜間尿量が減少し、HUSが延長したという報告22)がありますが、実際に使用してどのようにお考えでしょうか。
内山 当院では80歳以上の高齢者に処方していますが、夜間排尿回数が改善した患者さんがいらっしゃいます。問診のときにHUSを確認して、「4時間以上あればよいですね」と話しています。
山岸 当院の患者さんの平均年齢は70歳弱ですが、服用して夜間排尿回数が減少した患者さんがおられます。
皆川 実際、1週間も待たなくても効果発現が期待できるのではないでしょうか。

ミニリンメルト®OD錠50μg/25μg処方における安全性

石塚 ミニリンメルト®OD錠50μg/25μg処方における安全性はいかがでしょうか。低ナトリウム血症への注意喚起がされている薬剤です。対処方法などについてもご意見いただきたいと思います。
内山 血清ナトリウム値が低い患者さんには注意しています。
山岸 私は、水分制限を守ることができて、血清ナトリウム値が140mEq/L以上でないと処方しないようにしています。
三井 ミニリンメルト®OD錠50μg/25μgが尿浸透圧>200mOsm/kgを示す作用持続時間は、25μg群で1.00時間、50μg群で2.40時間だったと報告されています(それぞれp=0.329、p=0.018 vs プラセボ群、t 検定)(図723,24)。朝まで作用が継続する用量ではないということです。一方で海外のメタ解析の報告によると、男性患者で投与から低ナトリウム血症(血清ナトリウム値<130mEq/L)が発現するまでの時間は、25μgで1週間程度、50μgでは1~3週間が多く25)、安全性の観点から、投与1週間は注意する必要があると考えます。また、投与後の血清ナトリウム値の分布を年齢別に統合解析した結果では、130mEq/L未満となる予測因子は男性高齢患者でした26)。このため、高齢者では25μgからの使用も考慮すべきと考えます。

図7

ミニリンメルトミニリンメルト®OD錠50μg/25μgの平均作用持続時間(国内第Ⅱ相試験、主要評価項目)

承認外用量の投与群が含まれているが、承認時評価資料であるため紹介する。

ミニリンメルト®OD錠50μg/25μgの平均作用持続時間(国内第II相試験、主要評価項目)

100μgの主要評価項目の結果は承認されている「用法及び用量」を上回るため、削除

〔試験概要〕
試験デザイン 多施設共同、無作為化、二重盲検、プラセボ対照、並行群間比較試験
対象 夜間頻尿患者139例(男性74例、女性65例)
投与方法 ミニリンメルト®OD錠10、25、50、100μgまたはプラセボを水負荷下、舌下・水なしで単回投与した。
主要評価項目 尿浸透圧が200mOsm/kgを超えている作用持続時間(最大12時間)
安全性評価項目 有害事象の発現頻度および重症度、臨床的に問題であると判断される臨床検査値およびバイタルサインの異常
統計解析方法 t 検定を用いた。

安全性

副作用 (全患者:女性データを含む)副作用の発現率は、100μg群で8.3%(2/24例)、50μg群で9.1%(2/22例)、25μg群で4.5%(1/22例)であり、その内訳は血中ナトリウム減少が100μg群で8.3%(2/24例)および50μg 群で4.5%(1/22例)、血圧上昇が50μg群および25μg群で各4.5%(1/22例)であった。10μg群およびプラセボ群に副作用は認められなかった。本試験において重篤な有害事象および死亡例は認められなかった。
(男性)副作用の発現率は、100μg群で16.7%(2/12例)、50μg 群で9.1%(1/11例)であった。10μg群、25μg群およびプラセボ群では認められなかった。

4. 効能又は効果 男性における夜間多尿による夜間頻尿

6. 用法及び用量 成人男性には、通常、1日1回就寝前にデスモプレシンとして50μgを経口投与する。

7. 用法及び用量に関連する注意(抜粋)

7.1 年齢、体重、血清ナトリウム値、心機能等の状態から低ナトリウム血症を発現しやすいと考えられる場合には、デスモプレシンとして25μgから投与を開始することを考慮すること。

社内資料:国内第Ⅱ相試験(CS36試験)[承認時評価資料]
Yamaguchi O, et al. BJU Int 2013; 111: 474-484.[COI:フェリング・ファーマ実施治験]

ミニリンメルト®OD錠50μg/25μg処方が適する対象患者

石塚 最後に、ミニリンメルト®OD錠50μg/25μgは、どのような患者さんに処方するのが適していると考えていますか。
内山 夜間頻尿を訴える患者さんは多くいます。当院でのミニリンメルト®OD錠50μg/25μgの使用経験はまだ少ないですが、LUTSを治療しても夜間頻尿があれば、できるだけ早く使用していきたいと考えています。
山岸 夜間頻尿に本当に困っている患者さんは、治療意欲が高く、実際に服用して効果を自覚すると、より積極的に治療に協力していただけます。本剤の認知度が高まれば、より使いやすくなると思います。
皆川 HUSの延長はとても意義があると思います。また、作用時間が短いこともメリットと考えます。作用持続時間が短いことを説明することもあり、患者さんに納得いただいてから使用しています。
三井 高齢者では低ナトリウム血症などへの注意も必要ですが、EAUのガイドラインでも夜間頻尿にはミニリンメルト®OD錠の使用が推奨されており、本邦でも使用実績が増えていけば、安全性も含めて、どのような処方が適しているのか、明らかになると考えています。
石塚 本日は、ガイドラインの改訂ポイントや日常診療での使用経験をお話しいただき、ありがとうございました。本座談会が夜間頻尿診療に役立ち、患者さんのQOL向上につながることを願っています。

文献

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  • 2)van Kerrebroeck P, et al. Neurourol Urodyn 2002; 21: 179-183.
  • 3)日本排尿機能学会/夜間頻尿診療ガイドライン作成委員会(編). 夜間頻尿診療ガイドライン. ブラックウェルパブリッシング; 2009. p.83-93.
  • 4)総務省統計局.統計トピックスNo.126. 統計からみた我が国の高齢者(2020年9月15日現在推計)
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  • 13)菊地悦啓ほか. 日泌尿会誌1995; 86: 1651-1659.
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  • 17)古池保雄監修. 基礎からの睡眠医学. 名古屋大学出版会; 2010. p.30-35.
  • 18)宮崎総一郎ほか. 改定版 睡眠と健康. 放送大学教育振興会; 2017.
  • 19)van Kerrebroeck P, et al. Eur Urol 2007; 52: 221-229.[COI:フェリング・ファーマ実施治験]
  • 20)日本泌尿器科学会編. 男性下部尿路症状・前立腺肥大症診療ガイドライン. リッチヒルメディカル: 2017. p.79-83.
  • 21)Yoo S, et al. PLOS ONE January 7 2019.
    https://doi.org/10.1371/journal.pone.0207208(2021年9月29日閲覧)
  • 22)西野好則. 泌外 2020; 33: 1211-1217.
  • 23)社内資料:国内第Ⅱ相試験(CS36試験)[承認時評価資料]
  • 24)Yamaguchi O, et al. BJU Int 2013; 111: 474-484.[COI:フェリング・ファーマ実施治験]
  • 25)Juul KV, et al. BJU Int 2017; 119: 776-784. [COI:フェリング・ファーマ実施治験 本論文の著者は、フェリング・ファーマ社の社員である。]
  • 26)社内資料:国内第Ⅲ相長期投与試験(131試験)[承認時評価資料]

略歴(Profile)

石塚 修 先生

司会

信州大学医学部泌尿器科学教室
教授

石塚 修 先生

Ishizuka Osamu

1984年

信州大学医学部卒業

1993年

スウェーデン・ルンド大学泌尿器科 客員研究員

1995年

市立甲府病院泌尿器科 医長

1996年

信州大学泌尿器科 講師

2001年

信州大学泌尿器科 助教授

2007年

信州大学泌尿器科 准教授

2013年

信州大学医学部附属病院 診療教授

2014年

信州大学医学部泌尿器科学教室 教授

2017年

信州大学医学部附属病院
病院長補佐(病院機能評価担当)併任

2020年

信州大学医学部附属病院 中央手術部長併任

三井 貴彦 先生

山梨大学大学院
総合研究部泌尿器科学講座
教授

三井 貴彦 先生

Mitsui Takahiko

1993年

北海道大学医学部卒業

2002年

北海道大学大学院医学研究科修了 医学博士取得

2002〜
2005年

アメリカ ペンシルバニア州フィラデルフィアの
Drexel大学で博士研究員として研究に従事
(研究テーマ:中枢神経(脊髄)の再生と
排尿機能回復について)

2006年

北海道大学病院泌尿器科 助手

2007年

北海道大学病院泌尿器科 助教

2015年

山梨大学医学部附属病院泌尿器科 講師

2016年

山梨大学大学院総合研究部泌尿器科学講座 准教授

2020年

山梨大学大学院総合研究部・泌尿器科学講座 教授

皆川 倫範 先生

信州大学医学部附属病院
泌尿器科 講師

皆川 倫範 先生

Minagawa Tomonori

2002年

信州大学医学部卒業
以後、長野県内の病院を勤務
(信州大学病院、佐久総合病院、長野市民病院、
安曇野赤十字病院)

2010年

信州大学大学院修了し学位取得
(医学博士、
信州大学大学院 医学系研究科博士課程医学系専攻、
泌尿器科学)再生医療、排尿機能の基礎研究を行った。

2010年

アントワープ大学(ベルギー)留学

2012年

信州大学医学部附属病院 助教

2013年

アントワープ大学(ベルギー)学位取得

2015年

信州大学医学部附属病院 講師(現職)

2020年

慶應義塾大学医学部放射線科学(診断)
非常勤講師

内山 秀行 先生

うちやま泌尿器・腎クリニック
院長

内山 秀行 先生

Uchiyama Hideyuki

1988年

山梨医科大学(現 山梨大学)医学部医学科卒業

1988年

山梨医科大学(現 山梨大学)泌尿器科学講座入局

1989年

共立蒲原総合病院勤務

1991年

富士吉田市立病院勤務

1993年

みつわ台総合病院(千葉市)勤務

1994年

山梨厚生病院勤務

2000年

うちやま泌尿器・腎クリニック(敷島町、現 甲斐市)
院長

山岸 貴裕 先生

山岸泌尿器科クリニック
院長

山岸 貴裕 先生

Yamagishi Takahiro

2001年

信州大学医学部卒業
以後、長野県、山梨県内の病院を勤務
(信州大学病院、長野市民病院、長野松代総合病院、
佐久総合病院、飯田市立病院、山梨県立中央病院など)

2016年

長野松代総合病院泌尿器科 部長

2018年

山岸泌尿器科クリニック 院長

所属は座談会開催時(2021年9月現在)
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